子どもの集中力を発揮させるには?集中できない理由と集中力をつけるためのヒント②
最終更新日:2021/09/16
ゾウ使いはゾウには勝てない!
前回は、どうして子どもが集中できないのか、その理由をお伝えしてきました。
人の脳には、理性を司るエリアである前頭前皮質と、本能を司るエリアである辺縁系があり、それぞれを「ゾウ」=「辺縁系」、「ゾウ使い」=「前頭前皮質」と例えました。ゾウ使いはどうしてもゾウに勝つことができません。しかし、それは私たちの祖先が生き延びていくために必要なことでした。その結果、子どもは衝動に負け、注意が「やらなくてはいけないもの」から逸れてしまうのです。
しかし、気落ちする必要はありません。前回述べたとおり、集中することを得意とする人は存在しませんが、驚くほど集中力を発揮している人はいるのです。
今回は、「ゾウ」=「本能、衝動」をコントロールして、子どもが集中力を得るためのヒントをお伝えしていきます。
子どもがどうしてゲームには集中できるのか
まずはじめに、子どもがどうしてあんなにゲームに集中できるのかをお伝えしていきます。
子どもも大人も熱中するゲーム
子どもは勉強には集中をしないくせに、テレビゲーム、スマホゲームなどには集中力を発揮しますよね。「この集中力をどうして勉強にまわせないの?」と愚痴を言うママ、パパは多いでしょう。
ゲームに夢中になるのは、子どもだけではありません。大人も熱中します。長時間、ゲームをしすぎて、死亡した例がいくつもあります。
どうしてそこまでして人はゲームをしたがるのでしょうか。明らかにゾウの暴走が原因ですが、ゾウの役目は本来なら、たくさんの食べ物を集め、命をおびやかすものから身を守り、生き延びるためであるはずです。
ゲームにのめりこんでしまう原因は「ごほうびの予感」
ゲームにのめりこんでしまう原因は、ゲームクリエイターたちが「ごほうび」の見せ方と出し方がうまいからに他なりません。そして、クリエイターたちは、人が「ごほうび」自体よりも、「もう少し頑張れば…」という「ごほうびの予感」に惹きつけられることを知っています。ゾウもこのときに、最大のパワーを発揮します。
「ごほうび」が大きいか、小さいかどうかは、ゾウがパワーを発揮するのにあまり関係しません。これも、祖先が生き延びるために身につけた性質です。遠くにいる獲物の大群よりも、近くにいる1匹の獲物を確実に狩ったほうが、しばらくの飢えはしのげます。
ですから、人は「ごほうび」の種類や多い少ないは関係なく、とにかく「ごほうびの予感」に反応します。それが私たちの生活に直接役に立たないゲームだとしてもです。
ゾウをコントロールするポイント
前回述べたとおり、ゾウ使いがゾウに勝つことはできません。ですが、あらかじめゾウ使いが、ゾウを誘導し、狙った方向に誘導さえできれば、ゾウの莫大なパワーを利用することができます。
では、ゾウをコントロールするには、そうすればいいでしょうか。子どもの集中力を発揮させるには、どうすればいいでしょうか。次の4つのポイントをおさえれば、ゾウを乗りこなし、子どもも勉強などに集中が続けられるかもしれません。
ゾウを刺激しないこと
まず1つ目のポイントは、「ゾウを刺激しないこと」です。
ゾウが暴走するようなところに近づかない、暴走するようなものを近づけないように気をつけましょう。
例えば、子どもが勉強しているときに、ゲームやスマホが目に入れば、注意は勉強からそちらに移るでしょう。勉強とゲームでは、先ほど述べた「ごほうびの予感」は、ゲームのほうが圧倒的にあります。子どもは勉強に集中できなくなり、勉強のスピードが遅くなるか、ママ、パパに見られないようにこっそりとゲームをしだすことでしょう。
ですから、勉強中はゲームやスマホはもちろん、気がそれそうになるものは、すべて見えないようにしましょう。部屋や机の上もごみごみしているよりも、勉強に必要なものだけおいてあるほうが集中できますよ。
部屋や机の上が散らかっていて、なかなか勉強に取り組めないというときは、ダンボール箱など
にとりあえず全部入れてしまうというのが手です。
他に、ついつい食べてしまうおやつも、見えないところに隠してしまいましょう。
ゾウの機嫌を損ねないこと
2つ目のポイントは、「ゾウの機嫌を損ねないこと」
前回述べたとおり、ゾウは難しいことが嫌いです。ですから、人は長期的で重要なタスクよりも、短期的で重要度の低いタスクを優先させてしまいます。これを「達成バイアス」と言います。
昔からビジネス書の世界では、「最初に難しいタスクをしろ」というアドバイスがされてきました。最初に難しいタスクをしておけば、あとはリラックスして残りのタスクに取り組めるという理論ですが、これは難しいタスクを嫌うゾウの機嫌を損ねてしまいます。なかなか手をつけられません。
ここ数年では、達成バイアスを利用して、簡単なタスクからこなしたほうが、ゾウも喜び、集中力が上がると言われています。
簡単なタスクであっても、こなすことができれば、ゾウは達成感を得ることができ、脳内にドーパミンが大量に放出されます。ドーパミンには、注意力やモチベーションを引き出す働きがあり、タスクを終えた子どもの集中力は増加。その勢いで次のタスクも集中して行うことができます。
ですから、勉強のはじめは、すぐに終わる問題か得意な科目の問題を解かせたほうが、子どもの勉強ははかどります。
しかし、簡単な問題をいつまでも解かせるのは、これもゾウの機嫌を損ねます。かといって、難し過ぎる問題も「頑張っても『ごほうび』が得られないかもしれないから放っておこう」と集中力を下げてしまいます。
最初の簡単な問題を解かせたら、なんとか解けそうな問題を解かせるのが、ゾウの機嫌を保ち、集中力を持続させるでしょう。
ゾウ使いをトレーニングすること
3つ目のポイントは、「ゾウ使いをトレーニングすること」です。
ゾウ使いを鍛えることで、ゾウを少しでもコントロールしやすくします。ゾウ使いを鍛えることは、例えば、セルフコントロール能力を伸ばすことです。セルフコントロール能力は、今までも何回か触れてきましたが、学歴、収入の高さや、犯罪に手を染めないか、幸福度に大きく影響します。
注意が他のものにそれたとき、自分を律して、注意をもとに戻すというときも、セルフコントロール能力が必要です。セルフコントロール能力は、瞑想や運動をすることでトレーニングすることができます。子ども向けの瞑想の仕方については以前に説明しましたね。
また、「自分は難しいこともやり遂げられるんだ」と自然に思うことができる自己効力感を持足せることも、ゾウ使いを力をアップさせます。
自己効力感を高めるには、「記録」することがオススメです。記録をすれば、自分が今までどれだけ達成してきたかが一目でわかります。「これだけ続けられたのだから、自分はできる人間に違いない」と子どもの自信を高め、勉強などへの意欲を高めてくれます。
オススメの記録の仕方については、また別の記事でお伝えします。
また、ゾウ使いが疲れてしまうと、ゾウは暴れてしまいます。ストレスを貯めるのを防ぎ、良質な睡眠を取りましょう。また、集中力には、普段の食べ物も影響しています。ジャンクフードやお菓子ばかりでは、栄養が不足し、ゾウ使いは力を発揮できません。
プロスポーツ選手が普段の食事の栄養バランスに気を使っているのは、よく聞く話です。これは、体づくりのためでなく、集中力を十分に発揮するためでもあるんですね。
できるだけ、脳の基礎体力を作るための栄養素を取るよう心がけましょう。科学界では、以下のような栄養素を重視しています。鉄分、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル、ビタミンD、葉酸、ビタミンB12、オメガ3脂肪酸、コリン、必須アミノ酸、Sアデノシルメチオニンです。
ゾウを調教すること
そして4つ目のポイントは、「ゾウを調教すること」です。
ゾウは習慣に従って行動します。悪い習慣を止め、良い習慣を身につけられれば、自然とゾウのパワーを良い方向に利用することができます。これが1番強力な方法でありますが、1番難易度が高い方法かもしれません。しかし、1番シンプルな方法でもあります。それは、ひたすら「反復」することです。
ゾウには「反復」に強く反応するセンサーが付いています。これは何が起きるかわからない自然の中で、一定のリズムで起きる事象に気づき、正確な予測ができた者が生き延びてきたからです。例えば、同じ時期に同じ場所に実る果実や、ある季節には流行る病などです。
何度も繰り返されることに対して魅力を感じ、「反復」されることにモチベーションが高まるように、プログラムされているのです。
習慣を身につけるには、どのくらいの期間が必要でしょう。簡単なことであれば、習慣は早く身につき、難しいことであれば、時間はかかります。運動であれば週4回を2ヶ月続けると、身につくという研究結果があります。
また、「5分ルール」を使いましょう。例えば、勉強をしたくないときもあります。そのときは、「とりあえず5分だけ」と小さな我慢をさせましょう。また、勉強の集中が途切れてしまったときも、「あと、5分だけ」と積み重ねていけば、いつの間にか長時間になっていたりします。「ゲームをしたい」、「スマホを見たい」という、いろんな欲求を乗り越えた体験が、自己効力感にもつながります。
まとめ
いかがだったでしょうか。子どもが集中力を発揮できる方法についてお伝えしてきました。
ゾウをうまくコントロールすることができれば、ゾウの莫大なパワーを利用し、驚くほどの集中力を発揮することができます。ぜひ、お伝えしたポイントを試してみてください。