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「食」から学ぶ日本の伝統・文化と心。親子で知って・味わう「伝統食」!

公開日:2024/01/17
最終更新日:2024/01/17

日本には、四季折々さまざまな行事がありますが、行事に欠かせないのが「伝統食」の数々。年明けからは、お正月・節分・ひな祭りなど、親子で楽しめる行事と、それにまつわる「食」がたくさんあります。でも意外とその由来や意味については知らないまま味わっていることも多いのでは?
そこで今回は、「日本伝統食文化協会」の袖山洋子さんに日本ならではの伝統食の魅力を伺うとともに、年明けから春先に味わえる様々な「行事食」のついてもお話しをうかがいました。子どもと一緒に行事ごとの「食」を楽しみながら、日本の歴史や食文化にふれてみましょう!


◆日本の伝統食の魅力とは
まず、日本の伝統食とはどういったものなのでしょう。その特徴や魅力について、袖山さんに教えていただきました。

「日本の伝統食とは何を指すの?と思われる方も多いかと思いますが、私は日本人の命をこれまで繋いできたものだと思っています。日本は周囲を海に囲まれた南北に長い島国で、国土の約75%が山地です。変化に富み、豊かな自然あふれる土地には、それぞれ伝統の作物があります。加えて、四季折々の食材、つまり“旬”の美味しさが詰まったものもたくさんありますよね。日本にはこうした食材を活かした伝統食が各地にあり、少しずつ形を変えながらも現代の私たちの食生活に根付いています」。

日本の伝統食の大きな特長として袖山さんが挙げるのが、酵母や乳酸菌、麹などといった、微生物による「発酵」を利用した伝統食材の多さ。発酵食品というと納豆や日本酒などの食品がすぐに思い浮かびますが、味噌や醤油といった、日本人の毎日の食生活に欠かせない調味料も発酵の力によってつくられています。

「漬物もまた、日本に古くから伝わる発酵食品です。今は、季節に関係なくいろいろな野菜が店頭に並びますが、昔は冬場など、野菜が収穫できない時期がありました。そんな時期にも漬物として野菜が食べられるよう工夫を凝らし、食物繊維や乳酸菌という健康に必要な栄養を取り続けてきたことも日本人の知恵なのです」

保存性を高める作用だけでなく、栄養学的にも発酵食品は身体によい食品であると分析されています。でも、昔はそんな分析技術はなかったはず。より長く、おいしく、身体によいものを食べられるようにと、多くの人が長い時間をかけ、試行錯誤を重ね、知識や経験を受け継ぎながら作り上げられてきたものが、今ある日本の伝統食であり、それが伝統食の魅力だと袖山さんは言います。

「実は発酵食品作りに欠かせない『麹菌(アスペルギルスオリゼー)』も、最初は有害な毒素を生成する菌だったといわれています。ある時、突然変異でその毒素を作る遺伝子を失ったものを見極め、選別し、その菌を日本人はうまく飼いならして(育種・培養して)安全な発酵技術を育んできたんですよ」

目に見えない細菌の存在に気づき、その働きや性質を理解するだけでなく、性質まで変えて共存してきたなんて!私たちが毎日のように口にしている調味料や食べ物に、そんな深いストーリーがあったなんて、驚きです。

「旬や季節、地域性を活かした食材、健康的な食生活を支える栄養バランス、年中行事との関わりなど、和食の魅力は本当に奥深いと思います。たとえば『一汁三菜(主食のごはんに、汁ものと3つのおかずがつく食事)』や『まごわやさしい(豆・ごま・ワカメなどの海藻類・野菜・魚・シイタケなどキノコ類・いも』という言葉をベースにした食生活が身体によいことはよく知られていますが、とても理にかなっていますし、簡単に美味しく栄養が摂れる方法なんです」

2013年には、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食は「食」という枠を超え、世界にも認められる文化になっています。ヘルシーな食事として世界からの注目を集める日本食ですが、それだけでなく、日本で伝統的に培われてきた「食の知恵」が、世界の食を支えるために将来さらに大きな役割をはたせる可能性もあります。

「たとえば、一般的に、漬物を作る際には塩は欠かせないものなのですが、長野県の木曽地方には塩を一切使わず乳酸発酵をさせた『すんき』という漬物があります。これは海から遠く塩が貴重品だった地域でも、冬を越すために欠かせない保存食である漬物を作るために培われれきた知恵の賜物と言えますが、最近の研究でも、すんきにはヨーグルトに匹敵するほどの乳酸菌があることが確認されているんです」

自然豊かな日本ですが、必ずしも農業に向いている土地ばかりではなく、土地がやせていて作物が育ちにくい土地も少なくありませんでした。そういった中でもしっかりと栄養をとるための知恵が「伝統食」には詰まっていると袖山さん。こうした「和食の知恵」を活すことで、いずれ食糧難に苦しむ世界の人々を救うことにも貢献ができる可能性もあるんです。

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◆伝統食を知れば知るほど行事がもっと楽しくなる!
日本の伝統食といえば、季節ごとの華やかな「行事食」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。年中行事とのかかわりが多いことも和食の特徴のひとつ。「おせち料理」から「年越しそば」まで、日本の年中行事は「食」と共にあると言っても過言ではありません。

なかでも年明けから春先にかけては、毎月のように「食」も楽しめる伝統行事が目白押し!そこで1月~3月の代表的な行事食の特徴やその背景について、袖山さんに伺いました。

おせち料理(1月)
お正月といえば、おせち。おせちの語源は「御節供(おせちく)」で、もともとは神様に供え、神様とともにいただく食事なんですよ。おせちを食べる時に使用する祝い箸は、両端が細くなっているという特徴がありますが、片方は神様、もう片方は人間が使うためのものなのです。
そして、おせち料理には、健康・長寿・幸せにつながるおめでたい意味を持つ食材がたくさん登場します。重箱に入っていることにも、幸せやめでたさを『重ねる』という願いが込められています。また保存がきくという特徴もありますが、日頃台所で忙しく働く女性を休ませたいという配慮もあったようです。
今は市販のおせちを購入する人も多く、「洋風おせち」などアレンジされたおせちも人気ですが、何か一品でも子どもと一緒に手づくりしてみるのも楽しいのではないでしょうか。おせち料理は、ネットで検索してもレシピがたくさん出てきます。手綱こんにゃくを一緒に下ごしらえしたり、かまぼこの飾り切りを作るだけでも楽しいものですよ。なかでも甘くて子どもも大好きな伊達巻なども、白身のすり身が手に入らなくても、はんぺんと卵で簡単に作ることができるのでおすすめです。

お屠蘇(1月)
新年は、新年のあいさつとともに、お屠蘇を飲みますよね。清酒(日本酒)を盃に注いで飲むご家庭が多いと思いますが、昔から味醂(みりん)に屠蘇散(とそさん)という数種類の生薬を一晩浸したものをいただくという風習があるのをご存知でしょうか。お屠蘇の「屠」には邪気を払う、「蘇」にはよみがえるという意味があるのですが、お屠蘇というのは、お正月のお祝いのお酒という意味合いだけでなく、元延命長寿の願いが込められた「薬酒」という役割もあるのです。また、年が若い人から順番に飲むものとされてるのですが、これには、若い人の気を年長者に分けて皆元気に、という願いが込められています。
ちなみに「屠蘇散」は、年末になると薬局、ドラッグストアや酒販店などでも販売されています。みりんは普段は調味料として使うことしかないかもしれませんが、江戸時代には甘いお酒として飲まれていました。みりんを使って屠蘇散を作る際には、みりん風調味料ではなく、本みりんを使うことがポイント。ただし、あくまでもお酒ですので、20歳未満の人は控えてくださいね。

七草がゆ(1月)
お正月明けになると、「春の七草パック」などがスーパーの店先に並びますね。昔の人は、春の野山に生えている七種類の野草を1月6日に摘み、夜、七草ばやし(囃子)を歌いながら刻んで神棚に備え、翌7日の朝、七草を入れた粥を食べ、邪気を祓い健康を祈願しました。今でも七草がゆは「健康祈願」の食べ物ということはよく知られていますが、なぜこの時期に食べるのでしょう?正月料理で疲れた胃を休める役割、この時期には貴重なビタミン補給の意味もありますが、実は七草ばやしのなかにも出てくる『唐土(とうど)の鳥=渡り鳥』にも関係があるのです。今も鳥から感染する伝染病は多いものですが、昔から「渡り鳥が病気を連れてくる」という認識があったため、渡り鳥が飛来してくる前に、冬を越し、雪の下からやっと芽吹いた生命の喜びとも言える七草を食べることで、病気に負けない身体をつくっておこうという先人の願いが、七草がゆには込められていると言われています。

節分(2月)
節分の「節」は、季節のこと。季節の分かれ目は1年に何度かありますが、冬と春を分ける立春は、旧暦では新しい年の始まりになることから1年のなかでももっとも大きな節目なので、豆撒きをして家から災いや悪いものなどを追い出します。では、なぜ大豆を使うのかというと、大豆は昔から邪気を払うものと伝えられていたからです。また、生の大豆だと「芽(邪気)が出てくる」とのいわれから、必ず炒った大豆を撒きます。かつては節分の夜に豆を炒り、桝に入れて神棚に供えたのち、「鬼は外、福は内」と唱えながら、窓や玄関を開け放ってすべての部屋で行うことがならわしでしたが、現代の住まいではそうもいきませんよね。そのため玄関先やリビングなど、掃除がしやすい場所で行うだけでもいいと思います。また、豆まきが終わったあとには、年の数だけ豆を食べ、無病息災を祈念しますが、残った炒り大豆は、そのまま食べるだけではなく、サラダのトッピングに使ってみたり、お米と一緒に炊き込んだりと、実は色々使えて便利ですよ。

恵方巻(2月)
「恵方巻」を食べる風習は、もともと大阪の花街で商売繁盛を願って食べられていたことが発祥で、それが大阪の一部地域にも伝わり、その後大手コンビニチェーンなどが火付け役となって全国にも広がっていきました。節分といえば恵方巻がイメージされるほど、今では全国的な行事としてすっかり定着しましたが、その広がりの背景には新しモノ好きの日本人の習性の後押しがあったのではないでしょうか。その年の恵方を向いて丸かぶりで食べる、食べている間は黙って食べる、といったゲーム感覚に近いちょっと変わった食べ方のルールも、現代の私たちの心を掴む魅力の一つなのかもしれません。
伝統食とは多くの人が長い時間をかけて作り上げていくもの。まだまだ歴史が浅いとはいえ、今まさに「伝統が生まれつつある食べ物」と考えると、現在の広がり方もとても興味深いものに見えてきます。

ひな祭り(3月)

お雛様を飾り、ひなあられやひし餅、ちらしずしなど、色彩豊かな行事食をいただくお節句。女の子がいるご家庭は毎年楽しみにしているのではないでしょうか。見た目が華やかなちらし寿司は、縁起がよい食材が多く使われている伝統食です。また、ひな祭りの食事に欠かせない蛤のお吸い物にも意味があるんですよ。蛤は、上下の貝がぴったりと重なることから、将来、相性が合う結婚相手にめぐりあえるようにという願いが込められています。

四季折々、津々浦々の変化に富む日本で育まれてきた伝統食。日本の人々の命を繋いできた食べ物には、日本で暮らしてきた先人の歴史と知恵、そして文化と思いが詰まっています。さまざまな行事を通じて普段とは違った特別な「食」を味わえるこの季節。ぜひ親子で行事食を食べて、日本の文化に触れてみてくださいね!


プロフィール
袖山洋子さん
日本の伝統的な食文化についての知識を広める活動を行う「日本伝統食文化協会」を設立。忘れられつつある日本の季節の行事食や伝統食材にスポットを当てたイベントなどを主催するなど、日本の伝統食の見直しや普及活動、地域の食材を活かしたメニュー開発や商品の販売、食育イベントのサポートなどを通し『食を通した社会貢献』に携わる。