先人の知恵が詰まった天気や季節にまつわる7つのことわざを子どもに伝えてみよう!
最終更新日:2021/04/01
ことわざって何?
「ことわざ」は何か説明できますか。
ことわざの「こと」は言葉、「わざ」は行為などを指す業(わざ)のことで、何かを実現させる特別な言葉や、行いに意味や根拠を与えるような言葉とも言われています。
ことわざの多くは、いつ、誰が作ったということもなく、人々の生活の中で自然と生まれて言い伝えられてきた言葉です。その多くは、短く簡潔でありながら、ものごとの本質をついています。
だからこそ、いくつかの言葉のかたまりが、人の心を動かすこともあります。勇気づけてくれるものもあれば、人の心の痛いところを突くものもあります。生きていく上で大切なことを教えてくれます。
今回は天気や季節にまつわる7つのことわざをご紹介します。
冬来たりなば春遠からじ
1つ目は「冬来たりなば春遠からじ」です。
「冬来たりなば春遠からじ」とは、寒く厳しい冬が来たということは、暖かい春が目の前まで来ているということから、今は不幸な状況であってもじっと耐え忍んでいれば、いずれ幸せがやってくるということのたとえです。
このことわざは、イギリスの詩人、パーシー・シェリーの詩「西風に寄せる歌」の末節にある句から来ています。「If Winter comes, can Spring be far behind?」を日本語訳したのが、このことわざです。直訳すると「冬が来るならば、春はそのはるか後であろうか?」となりますが、やはり「冬来たりなば春遠からじ」の訳のほうがぴったりですね。
「止まない雨はない」や「明けない夜はない」という言葉も有名ですが、自然や季節にたとえると「すべてのものは変化していく」ということが受け入れやすくなるのかもしれません。大人は実感としてわかっていることですが、子どもは経験が少ないからこそ教えてあげたいことわざです。
暑さ寒さも彼岸まで
2つ目は「暑さ寒さも彼岸まで」です。
「暑さ寒さも彼岸まで」とは、残暑も、秋の彼岸を過ぎると衰えて涼しくなり、余寒も、春の彼岸のころには薄らいで、そのあとは過ごしやすくなるということです。また、辛いこともいずれ時期が来れば去っていくという意味もあります。
秋は秋分の日を境に日が短くなって、秋の夜長になっていきます。つまり、太陽が出ている時間も短くなるので、暑さも和らいでいきます。春は、この逆ですね。気象庁の彼岸の時の平均気温のデータを見てみると、確かにこのことわざはおおむね的を得ているようです。
1つ目の「冬来たりなば春遠からじ」と似たような意味で使われます。つらい状況に置かれていると時間の流れが遅く、それがずっと続くような気がしてしまいます。ずっとは続かないということを教えてくれます。
嵐の前の静けさ
3つ目は「嵐の前の静けさ」です。
「嵐の前の静けさ」とは、暴風雨が襲来する前に、一次的に静まりかえるところから、大きな事件や異変が起きる前には、一次的にやってくる不気味な静けさのことです。
このことわざは天気のことをたとえとして、「これからなにか起こるかもしれない」という予感がするときに使ったり、「今思うと…」といったように何か起きた後に思い返したときに使ったりすることができます。
普段と違うような静けさは、「この後不吉なことが起こるんではないだろうか」と不安になることがありますよね。昔の人はこれを「嵐の前の静けさ」とたとえました。お子さんにも、静かでも油断しないように教えてあげてください。
春眠暁を覚えず
4つ目は「春眠暁を覚えず」です。
「春眠暁を覚えず」とは、春の夜は短い上に、暑からず、寒からずで心地よいので、朝になったことにも気づかずに、眠り込んでしまって目が覚めないということです。つまりは、「春は寝坊してしまう」ということですね。
「春眠暁を覚えず」のもとは詩の一文で、これを読んだのは「孟浩然」という中国の詩人です。出世欲がなく、各地を放浪しながら歌を詠んだ人のようです。なんだか春でなくとも朝寝坊してしまいそうな人ですね。
子どもだと、季節による自分の体の変化に気づけないこともあるでしょう。もし、春にボーっとしていたりしたら、このことわざを教えてあげると「自分だけじゃないんだ」と知るきっかけになるかもしれません。
天高く馬肥ゆる秋
5つ目は「天高く馬肥ゆる秋」です。
「天高く馬肥ゆる秋」とは空が高く澄み渡り、快適でしのぎやすい秋の気候を表した言葉です。秋の季節の素晴らしさを表した言葉で、手紙などで時節の挨拶として多く使われます。
しかし、なぜ「馬肥ゆる」なのでしょう。これも昔の中国の詩から来た言葉です。
その詩の意味は、昔、中国には秋になると「匈奴」という騎馬民族が攻めて来ました。「夏の間に肥えた馬に乗った匈奴が、秋に獲れた収穫物を奪いにやってくるぞ」という警告する少し怖い意味の詩です。
騎馬民族が衰退したことから、「警戒」の意味はなくなり、現代の「秋の素晴らしさ」を表す言葉になりました。このようにことわざには、使われていくうちに元の意味とは変わっているものもあります。
秋の日はつるべ落とし
6つ目は「秋の日はつるべ落とし」です。
「秋の日はつるべ落とし」とは、秋の太陽が沈む様子は、まるで井戸の中へさっとつるべを落とすように早いものだということです。つるべとは、井戸から水をくみ上げるための道具のことです。
秋になると、日没の時間が早まるだけでなく、そのあとの薄明るい時間も短くなるので、日が沈むと間もなく、真っ暗になります。
今は井戸から水をくみ上げることも、街灯があるので日没時間を気にすることもあまりないかもしれません。それでも、ことわざとして残っていると昔の人にとって大切なことだったことがわかります。
狐の嫁入り
7つ目は「狐の嫁入り」です。
「狐の嫁入り」とは、日が照っているのに、雨がぱらぱらと降ること。日照り雨や天気雨のことを言いますね。
天気雨が降ると、狐の嫁入りがあるという言い伝えがあります。昔の人は、天気が良いのに、雨がパラパラと降っている様子を不思議に思ったことから、「これは狐の仕業に違いない」と思ったのでしょう。
今はよくわからない現象や不思議なことを「狐に化かされている」と考えないかもしれません。今とは、常識やものの見方もちがうのです。ことわざは、昔の人の考え方を教えてくれます。
ことわざも変化をしていく
天気や季節にまつわる7つのことわざでした。
ことわざの多くは、人々の生活の中で自然と生まれて言い伝えられてきた言葉です。ことわざは多くの人に当てはまる役立つ知識や、忘れられがちな大切なことを教訓として教えてくれたりします。
1つ目の「冬来たりなば春遠からじ」と2つ目の「暑さ寒さも彼岸まで」は、季節が移り変わっていくことから「つらい状況もずっとは続かない」ことを教えてくれます。3つ目の「嵐の前の静けさ」も天気と人の心を結びつけたものです。
4つ目の「春眠暁を覚えず」、5つ目の「天高く馬肥ゆる秋」、6つ目の「秋の日はつるべ落とし」はそれぞれの季節の特徴を教えてくれます。
ただ、「天高く馬肥ゆる秋」は元々警戒の意味のことわざでしたが、秋のすばらしさを表すだけに変わっています。「秋の日はつるべ落とし」は、つるべという道具は今は使われていませんし、「狐の嫁入り」も狐が人を化かすもの、という認識が今とは少し変わっています。
天気や季節は昔と大きくは変わらないかもしれませんが、どう捉えるのかは文化によってちがうのです。同じものを見ても、別のことを連想したりします。ことわざは、今の自分に役立てることもできますが、昔の文化を知るきっかけにもなります。
まとめ
いかがでしたか。天気や季節にまつわる7つのことわざをご紹介しました。
ことわざには、昔の人の知恵や経験が詰まっています。人の生活に影響を与えるけれど、自分たちでは変えられない天気や季節をどのようにとらえて、何に注意を払ってきたのかを教えてくれます。
中には、元の意味と少しずつ変わってきたものもあります。ことわざの由来や元をたどっていくと、昔の文化に触れることができます。ぜひ、お子さんとことわざを学んでみてください。天気の変化を感じやすい時期だと、よりことわざを実感しやすいのではないでしょうか。