親なら知っておきたいペリー就学前プロジェクトとは?非認知能力を鍛えよう!
最終更新日:2022/01/22
非認知能力を鍛えると人生を豊かにする?
「ペリー就学前プロジェクト」という社会実験をご存知でしょうか。この実験は子どもを持つ方であれば、ぜひ知っておきたい研究の1つです。アメリカのミシガン州にあるペリー小学校付属幼稚園で行われたことで、この名前がついています。
結論から言うと、40年にわたるペリー就学前プロジェクトでわかったことは、幼児期に「非認知能力」を高めると、大人になってからの人生の幸福度が上がるということです。非認知能力については、これまでの記事でも述べてきました。
「人生の幸福度が上がるなんて、ちょっと大げさなんじゃないの」と思うかもしれませんが、けっして大げさではなく、非認知能力を鍛えることは、子どもの将来にそれだけ大きな良い影響があるのです。
今回はペリー就学前プロジェクトでわかった幼児期に非認知能力を高めることの重要性と、子どもの非認知能力を高めるために親が子どもにできることについてお伝えして行きます。
非認知能力とは?
まずは、非認知能力の説明をしたいと思いますが、非認知能力があるなら、認知能力もあるはずと思いますよね。
認知能力は、認知できる能力のことで、数字に表すことのできる能力のことです。例えば、IQや偏差値がそれにあたります。
それに対し、非認知能力は、数字で表せない能力になります。そして、非認知能力は数えきれないほどたくさんの種類があります。ひととおり挙げていくと、自制心、想像力、やり抜く力、集中力、共感性、コミュニケーション能力、創造力、協調性、忍耐力、勤勉性、メタ認識、道徳性などです。
これらの能力を伸ばすと、40年後にどのようなことが起きるのでしょうか。
ペリー就学前プロジェクトの概要
次に、ペリー就学前プロジェクトの概要ですが、1962〜1967年の間、ペリー小学校付属幼稚園に通う3〜4歳の子ども123名を対象に行われました。対象とされる子どもたちの家庭は低所得層であり、子どもたちのIQも70〜85と低く、教育上リスクの高いアフリカ系アメリカ人でした。
この子どもたちを2つのグループ、就学前教育を施すグループと施さないグループに分けました。就学前教育を施すグループには30週間にわたり、専門家による指導を行いました。
その後、この2つのグループの子どもたちを追跡調査を行いました。3〜11歳までは毎年行い、14、15、19、27、40歳の時点でも行いました。そして、さまざまな項目でどんな違いがあるのか比較をしました。
ちなみに、この追跡調査は現在も行っています。されにどんな結果が出るのか楽しみですね。
プロジェクトは失敗に終わった?
最終的な結果を述べる前に、このペリー就学前プロジェクトは失敗に終わったのではないかとされた時期があったことをお伝えします。というのも、この研究の目的は、「子どものIQをあげること」だったのです。
IQが上げることができれば、貧しい子どもでも将来成功ができると信じて行われた実験だったのです。ただ指導後、数年はIQは上がったのですが、小学校3年生の時点で就学前教育を施さなかったグループとの差がなくなってしまったのです。
研究は失敗に終わったと思われたのですが、その後の追跡調査で、就学前教育を施したグループと施されなかったグループとの間に、さまざまな差が出始めました。それらは人生の幸福度に関わる差でした。
ペリー就学前プロジェクトの結果
それでは、就学前教育を施したグループと施されなかったグループとの間にどんな違いが出たのか、ここからはお伝えしていきます。
まずは年収です。就学前教育を施したグループの60%が年収2万ドル以上だったのに対し、施されなかったグループは40%であり、1.5倍になりました。
次に犯罪に手を染めやすいかです。就学前教育を施したグループの36%が逮捕歴5回以上だったのに対し、施されなかったグループで逮捕歴5回以上だったのは55%でした。5回ってかなり多いと思いますが、貧困層の子どもの環境はこんな状況であることがわかるとともに、就学前教育によって改善されていることがわかります。
次に持ち家率も、就学前教育を施したグループは36%、施されなかったグループは13%と、約3倍になります。また、高卒率も就学前教育を施したグループは77%、施されなかったグループは60%となりました。
そして、1番注目されているのが、14歳時点での基礎学力で、就学前教育を施したグループと施されなかったグループに大きな差が出たことです。
IQは上がりませんでしたが、それ以外の面で非常に良い結果が出たことが判明しました。そして、これらは非認知能力が就学前教育によって高まったことでもたらされたと言われています。
就学前教育の投資利回りは?
ペリー就学前プロジェクトに関して面白い試算があります。就学前教育の投資利回りはいくらかというものです。
ペリー就学前プロジェクトで使った費用によって、子どもたちの生活保護受給率が下がったり、所得や生産性が上がったりしたことを考えると、投資した分の効果はあったのか計算したのです。
その結果は、なんと投資利回り15〜17%でした。投資をやっている方ならわかるかと思いますが、もしこのぐらいの利回りの投資があったとしたら、ほぼ間違いなく詐欺か、もしくはかなりリスクのあるものでしょう。
例えば、3歳の時点で10万円投資したとすると、翌年には11万5千円になります。さらに次の年には役13万2千円になります。そして、20歳には100万ぐらいになります。
つまり3歳の時点で10万円分の教育をするのと、20歳の時点で100万円分の教育をするのと同じくらいの効果があると言われています。
もちろんこのような単純な計算ではないと思いますが、それだけ幼児期の教育は効果が大きいということです。「もしお金をかけるなら早いうちに」ということをこの試算で言いたいことです。
ペリー就学前プロジェクトの教育内容
次にペリー就学前プロジェクトでどのような教育がされたのかをお伝えします。
プロジェクトでは、平日の午前の2時間半、教師1人につき生徒5.7人の少人数制をとった形で教育を提供しました。
指導内容は子どもの年齢と能力によって調整されており、特に非認知能力を育てることに重きをおいて、子どもたちの自発性を大切にする活動を中心に行っていたそうです。いわゆる、アクティブラーニングです。
子どもたちは自分で遊びを計画し、実際にやってみて、「もっと面白くするにはどうすればいいかな?」と検討していきます。
考えている子どもたちを前に、教員はどのような行動をしていたかというと、見守り、サポートし、遊びを面白くするヒントを少しあげるくらいで、あまり手をかけすぎないようにしたそうです。とにかく子どもたちの自発性を伸ばすように、あまり教えすぎないようにしたそうです。
そして、子どもたちが「遊びを自分自身で考えて、展開した」と感じるような声がけにも意識したそうです。
また、教員は子ども自身が考えた遊びを実践して、毎日復習するように促します。この復習は集団で行いました。集団で行うことで、子どもたちは重要な社会的スキルを身につけたと言われています。
さらに週に1回90分、専門家が家庭訪問を行ったそうです。家庭訪問をして何を指導したかは不明ですが、おそらく家庭での子どもへの声かけの仕方や、親のメンタルケアを中心にされていたのではないかと思われます。
これらの指導を30週間行い、先ほど述べた子どもたちの将来に良い影響が出たのですね。
親が非認知能力を伸ばすためにできること
そして、親が子どもの非認知能力を伸ばすためにできることです。3つほど紹介していきます。
まずは、スキンシップです。
スキンシップは親ができる最強の手段です。子どもにも親にも良い影響があります。スキンシップをすると、賢くて、自己コントロールがうまく、社会性があり、ストレスにも強くなり、ほかにもたくさんの効果があります。
次に、前頭前野を鍛えることです。
前頭前野は感情のコントロールや考えることを司る脳の分野になります。ここが鍛えられると、自制心が鍛えられます。すると、人生が大きく変わっていきます。
鍛え方の1つには、ルールを守る経験をすることです。どのようにそんな経験をさせればいいかというと、遊びをたくさんさせてください。遊びの中にはたくさんルールがあります。ですから、たくさん遊ばせることで、たくさんルールを守る経験をさせることができ、前頭前野が鍛えられます。
そして、オープンエンドの遊びです。
オープンエンドとは「終わりがない」ということで、ごっこ遊びやブロック遊びのような終わりが曖昧なものです。オープンエンドの遊びでは、創造性や社会性が鍛えられることがわかっています。
まとめ
いかがだったでしょうか。ペリー就学前プロジェクトについてお伝えしてきました。
プロジェクトでは、非認知能力を鍛えると、将来の所得や学歴、持ち家率などが高まり、犯罪率が減り、人生を豊かになることがわかりました。
プロジェクトの中では非認知能力を鍛えるために、アクティブラーニングで、子どもの自主性、自発性を大切にした活動を行っていました。
親が子どもの非認知能力を鍛える方法は、スキンシップ、前頭前野を鍛えること、オープンエンドの遊びをさせることなどがあります。