ていねいに文字を書く練習が、子どもの発達につながる!
最終更新日:2020/03/29
子どもが字をていねいに書かない
「子どものノートを見ても、書いてある内容がわからない」や「注意をしても、めんどくさいと言って、雑な書き方しかしない」と悩まれているママやパパは多いのではないでしょうか。
大人からすると「ていねいに字を書いてもらいたい」と思っても、子どもは嫌がることもあります。理由を聞くと「やろうと思えばできるから、大丈夫!」とか「早く遊びたいから、宿題をサッサと終わりにしたい!」などと言われてしまうことも。
そうは言っても、字を書くことはこれから先は習慣となること。小学生のうちから、雑な字ばかりを書いていると、いざと言うときにもきれいな字が書けないことにもなりかねません。
しかし、なぜ文字をていねいに書く必要があるのでしょうか。そして、文字を書く練習をするメリットは何があるのでしょうか。
文字を書くために必要な力は3つある
そもそも、文字をきれいに書くためには3つの力が必要だと言われています。まず、正しい姿勢を保ち、自分がこれから書く字を視覚的にとらえ、思い描いたイメージの通りに手指先を動かせる必要があります。
3つの力のうちのひとつでも欠けてしまうと、文字を書くのはむずかしくなります。文字を書くためには、複数の条件を満たしている必要があるのです。
①正しい姿勢
まずは、安定した正しい姿勢を保てること。大人でも、寝転んだ状態できれいな字を書くことはできません。椅子がテーブルから離れすぎていたり、テーブルに対してななめに座っていたりすると、まっすぐ字を書くことはむずかしいです。座り方や姿勢のくせがついてしまうと、字にも影響をします。
もし、お子さんの姿勢がよくないという場合は、字を書くときの環境を見直してみてください。机や椅子の高さが合っていない、スペースがきちんと確保されていないなどの場合は、その子の努力不足ではなく環境が整っていない可能性もあります。
②書いている文字をとらえる視覚
二つ目は、鉛筆の先端や、枠のスペースを見る視覚です。まず、お手本の字が見えていないと、正しく写すことはできません。子どもの中には、ついつい鏡文字を書いてしまう子や、視覚的にとらえることがむずかしい子どももいます。
また、ノートのマス目が見えていなかったりすると、知らないうちに書いている文字がずれてきてしまうこともあります。道具を工夫することで、改善する場合もあります。マス目の大きいノートにしたり、鉛筆の濃さをより濃いものへ変えたりすると、見やすくなることもあります。
また、学習障害(LD)のお子さんは、この視覚で捉えることが苦手なお子さんが多いです。今回は学習障害については取り上げませんが「文字がどうしても読めない」や「写すことができない」場合は、視覚的に苦手な可能性もあります。
③鉛筆を持って動かす手の操作
三つ目は、手で鉛筆を持って動かす指先の操作です。紙に文字を書くときは、鉛筆と紙の間の摩擦抵抗により「書けている」ことが手に伝わります。この感覚があることで、私達は指先の力を微調整しながら、字を書いているのです。
字を書くのが苦手なお子さんの中には、この「手指先の操作」の感覚が鈍い子が多いと言われています。紙の上を書いていても、とらえにくいのです。手指先の感覚をとらえるのが苦手なお子さんには、下敷きを使ったりするとサポートになることもあります。
文字をていねいに書く練習がもたらすメリット
字を書くためには、三つの力が必要だというお話をしました。ていねいな文字を書くことは、これらの力を鍛える練習にもつながります。三つの力は「文字を書く」ために必要な力でした。
「本当は書けるのに、めんどくさがっている」場合などは、集中力の問題の可能性もあります。ここからは、文字を書く練習をするメリットを三つご紹介します。
①姿勢が整う
ていねいな文字を書くためには、姿勢を整える必要があります。つまり、文字を書く練習をしている間はずっと姿勢を保っていることになります。
文字を書く練習をしていると、正しい姿勢での座り方、そして鉛筆の持ち方などのフォームが身についてきます。これらは、どれも自然と身につくようなものではなく、意識をして体に染み込ませるようなものです。
「宿題をしているときはずっと正しい姿勢で」と言うと、お子さんも疲れてしまうかもしれませんが「字の練習のときだけは、姿勢を正しく」などと決めておけば、少しずつでも姿勢を整えることができるはずです。
②手指先の練習になる
視覚的にとらえることは、練習だけだとなかなか改善しないこともあります。視力の問題であれば、メガネが必要であったり、道具の工夫をしたりすることで改善することもあります。ただ、「写す字の形をとらえる」力は、書ける字が増えていくにつれて、自然とついてきます。
また、手指先の器用さも練習をしていくと、鍛えることができます。最初は、簡単な字のなぞり書きをしようとしても、ずれてきてしまうこともあるかもしれません。大きなマス目のノートを使っていても、大きくはみ出したりすることもあるはずです。
少しずつ練習をしていけば、手指先の器用さは上達していきます。なぞり書きが上手になったり、大きなマス目に書けるようになったら、マス目の小さなノートに変えてみたりすることで、段階を踏んでいくことができます。
③集中力が身につく
最後は、集中力です。たとえ、正しい姿勢で、視覚的にも字をとらえることができて、手指先をイメージ通りに動かせるとしても、急いだり、手を抜いたりしていると、ていねいな字を書くことはできません。
大人でも、疲れているときは、字が汚くなってしまったりしますよね。集中力が切れていると、文字はどうしても雑になってしまいます。
この集中力も練習することで、少しずつ改善していくのです。たとえば、最初は10分しか座って勉強できなかった子でも、毎日続けていけば15分に伸びてきたりします。
生まれつき、一つのことに対して集中することが苦手な子どももいますが、まったく変わらないものではありません。やみくもに練習さえすれば伸びるものでもありませんが、毎日の習慣にしていくことで、集中状態に入りやすくなるとも言われています。
「ていねいな文字を書けない」理由は、子どもによってちがう
文字ひとつをとっても、ていねいに書くためにはさまざまな要素が必要です。「字をていねいに書けない」お子さんがいても、どこに理由があるのかは人によってちがいます。
字を書こうとしても、思い通りに手指先を動かせないお子さんと、周りにあるものに気が散ってしまって集中できないお子さんでは、アプローチの仕方が変わってきます。
もし、お子さんが「いつも字が雑で読めない」のであれば、どこが原因なのか?それは、本人の努力で変えられるものなのか、それとも周囲の環境の調整をしたらいいのか、道具の工夫をすると改善されるのか。お子さんと一緒に、考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、ていねいな文字を書く練習についてでした。文字を書くためには、姿勢、視覚、手の操作など複数の力が必要です。
もし、お子さんが「字が雑で読めない」ような状態だとしたら、何に原因があるのか。それは、どうやったらよくなりそうか。一度、お子さんに聞いてみたり、別のやり方を提案してみたりしてはいかがでしょうか。