子どもの感受性を育もう!日本の民話で豊かな感情を体験させよう!
最終更新日:2021/01/09
むかし話は子どもの感受性を育ててくれる
むかし話はストーリーの内容や登場人物の感情などから、子どもにさまざまな感情を体験させてくれます。これは園や学校のような環境では体験できないものも含まれています。
むかし話にも日本のおとぎ話もあれば、海外のアンデルセン童話やグリム童話といったものもあります。アニメ映画が好きな子どもであれば、ディズニー映画の原作となったむかし話は前のめりで読みたくなるかもしれません。
ただ、子どもが日本の環境で育っていると、やはり日本古来の民話や童話のほうが子どもの心にシンパシーを生みやすいとも言われています。『桃太郎』や『かぐや姫』のような話は有名ですが、今日は知る人ぞ知る日本の民話をご紹介します。
子どもの感受性を育ててくれる日本のむかし話にはどのようなものがあるのでしょうか。
年神さま
まずは『年神さま』です。
年神さまの役目は、みんなに毎年1歳ずつ「年」を配ること。みんなに「年なんかいらん」と文句を言われながらも配らないといけません。そして、今年も年越しの晩がやってきました。
しかし、村はずれのおじいさんとおばあさんは、歳を取るまいとして、竹やぶに隠れてしまいます。なかなか2人を見つけられない年神様は、雲の上から2人の「年」の札を捨ててしまいます。
お札はひらひらと飛んでいき、おじいさんとおばあさんのおでこに、ぺたり。結局2人は歳を取ってしまいます。しかし、竹やぶでかくれんぼができ、若返ったような気分になれたおばあさんとおじいさんは楽しく年を越せました。
子どもには「歳を取りたくない」なんて気持ちは理解できないかもしれません。しかし、どんなに避けようとしても、歳は取ってしまうもの。特に歳を取ることのママやパパの悲喜こもごもと成長を喜ぶ子どもの対比は家族の中でもあるでしょう。そんな感情の違いを親子で楽しみながら、1年を悔いなく過ごすことの大切さを伝えていきましょう。
若返りの水
次は『若返りの水』です。
山の木を切って、炭を作る仕事をしているおじいさんは、山から家へ帰る途中、湧き水を見つけ、ちょうど喉が渇いていたおじいさんは、その水を飲みます。
おばあさんは、帰って来たおじいさんを見てびっくり。なんとおじいさんは結婚当初の若者の姿になっていたのです。おじいさんに「若返りの水」が湧く場所を聞いて、おばあさんはさっそく翌日飲みに出かけます。
しかし、待てど暮らせど、おばあさんは戻って来ません。おじいさんは村の人たちにも協力してもらい、おばあさんを探しにいくと、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきます。なんとおばあさんは「若返りの水」を飲みすぎて、赤ちゃんになってしまったのです。
「赤ちゃんになるほど飲むなんて…」と笑いがこみ上げてしまうお話です。先ほどの『年神さま」と同じく、ママやパパには若返りの水をたくさん飲んでしまったおばあさんの気持ちに共感できるかもしれません。この感情の違いも子どもにとっては大きな学びです。
過ぎたるは及ばざるが如しと言いますが、何事もほどほどがちょうどいいものです。欲張り過ぎないことの大切さも併せて伝えていきましょう。
ぶんぶくちゃがま
次は『ぶんぶくちゃがま』です。
ぶんぶく和尚さんのもとへ毎日やって来ていたたぬきがいました。和尚さんはたぬきを可愛がっていましたが、パッタリと姿を見せなくなりました。
それからある日、和尚さんは道具屋へ立派な茶釜を見つけます。和尚さんは気に入って、それを買います。しかしその茶釜に火をかけると、「あちちちち!」と言って、尻尾と手足が生えてきて、和尚さんはなんとも気味悪く感じました。
実はこの茶釜の正体はあのたぬきで、和尚さんはたぬきと気付かず、古道具屋に渡しました。古道具屋のもとにやって来たたぬきは、芸をして一緒にお金を稼ぎます。
結局、たぬきは茶釜のまま元の姿に戻れなくなってしまいましたが、古道具屋がお寺へ連れていき、和尚さんのもとで大事にされるのでした。
昔話に出てくるたぬきは、いつも何かに化けています。「何に変身してみたい?」と質問することで、子どもの想像力が高まります。このような問いかけをするときに、ママやパパも意見を持っておくことが大切です。そこから会話が膨らみ、子どもの感受性が広がっていきます。また、ママやパパの心の中を見ることができ、子どもの安心感や信頼感が増していくのです。
三枚のお札
次は『三枚のお札』です。
和尚さんの頼みで小僧さんは山に栗拾いに来ます。その際に和尚さんに3枚のお札を渡されます。いつの間にかあたりは暗くなり、小僧さんが困っていると、そこに1人のおばあさんが現れ、おばあさんの家に泊まることに。
実はおばあさんは山姥で、それに気づいた小僧は逃げ出します。山姥は小僧の後を追いかけて来ますが、小僧がお札を使うと、不思議なことが起きて、山姥の足を止めます。そして、小僧はなんとか寺へたどり着きます。
山姥は和尚さんに「小僧を渡せ」と言いますが、和尚さんは術比べをして勝ったら小僧を渡そうと約束をします。和尚さんは「手のひらに乗れるくらい小さくなれるか」と聞くと、山姥は言われた通り、小さくなります。そして和尚さんは小さくなった山姥をモチに挟んで食べてしまいました。
この話に出てくる山姥は「親の子どもへの執着心」を表していると言われています。親が子どもに執着すると悪い影響が出てしまうということなんですね。子どもにとっては、ハラハラするお話で楽しめます。
子どもの感情を揺さぶりながら、その裏でママやパパはハッとさせられる。お互いに違った感情の起伏が起こるのも、むかし話ならでは、です。
やまんばのにしき
最後は『やまんばのにしき』です。
ちょうふく山の山姥が赤ちゃんを産みました。「お祝いにお餅をもってこい」と伝えられ、「あかざばんば」というおばあさんが道案内役をし、2人の若者がお餅を持っていくことになりました。しかし、結局、若者2人は逃げてしまい、あかざばんばは意を決して、1人で山姥の家に行くことになりました。
山姥は、あかざばんばを歓迎しますが、いざ帰ろうとすると、山姥に21日間、お手伝いをするように頼まれてしまいます。そして言われた通り、あかざばんばは21日間手伝いをしました。その間は特に身の危険を感じることはありませんでした。
山姥はお土産に何回使っても、次の日にはもと通りになるという「山姥の錦」をプレゼントしてくれ、帰りは山姥の赤ちゃんにおんぶされ、家の前まで送ってもらうのでした。
村を救うためにおばあさん1人で立ち向かうなんて勇敢な話で、それに対して若者2人は情けないもの…と感想を抱いてしまいますが、これは先入観を持つことの愚かさを伝えてくれます。思い込みで相手を見てはいけない。子ども以上にママやパパがハッとさせられる内容のむかし話です。
むかし話を通じた心の教育
ここまで紹介したむかし話は、ストーリーから伝わってくる感情を子どもに楽しんでもらうことも大切ですが、その内容から得られる教訓について考えることが大切です。
『若返りの水』の話にあるような欲張りすぎないことの大切さや『やまんばのにしき』にあるような先入観を持つことの愚かさなどは、大切な学びとなるでしょう。学びの整理、そしてこれから生きていくために何がヒントとなるのかを考えることが、本来の意味での学習なのです。
文章を読んでそこから学べることは何か?と考える時間は、ご家庭で親子の対話から実施できるものです。親子のコミュニケーション機会を作る上でも大事にしていただきたいです。
まとめ
ここまで子どもの感受性を育ててくれる日本の民話を5作品ご紹介しました。
絵本や児童書だけでなく、YouTubeやサブスクリプションサービスなどを通じて、動画やアニメーションでむかし話に触れ合う機会が作れるようになりました。日本の民話はまだまだ少ないですが、それでもたくさんの動画があふれています。
スマホやタブレット、パソコンなどを効果的に使って、子どもの心や価値観を育むことは、現代の子どもたちの生活、そして環境に合っています。ただ、子どもにむかし話などを楽しませるときには、親子で読む機会をつくることも併せてお願いしたいところです。
ともに学びや気づきを共有しながら、親子が互いに高め合えるような関係性をつくることも同時に行っていきましょう。