子どもはどうしてお化けを怖がるの?子どもが「怖がり」になってしまう理由とその対応策とは?
最終更新日:2020/10/05
子どもはお化けが怖い
子どもが怖いものの定番と言えばお化け。子どもはどうしてお化けが怖いのでしょうか。
怖がる原因はいくつも挙げられますが、家族で入ったお化け屋敷、お化けや鬼が出てくる絵本やアニメ、そして親が子どものしつけとして言う「そんな悪い子のところにはお化けや鬼がやってくるよ」というような言葉。
しかし、これらのことによって、親が思っているよりも怖がってしまうこともあります。そのせいで、暗闇が怖くて夜1人でトイレに行けなくなったり、天井の木目がお化けに見えて眠れなくなったりして、親が困ってしまうことも。
どうすれば怖がりは克服できるのでしょうか。また、怖がりな子にしないために親が気をつけたいポイントとはなんでしょうか。
経験の繰り返しで怖くなる
恐怖の原理原則は何なのでしょうか。
何かを恐怖に感じるということは「それを怖いもの」と脳にインプットされているからです。つまり、インプットの仕方次第では、どんなものでも恐怖と脳が反応しまうかもしれないのです。これを心理学では恐怖条件付けと呼ばれています。
では、実際に、どれだけ簡単に恐怖症は作られてしまうのかがわかる、ある約100年前の心理学の実験をご紹介します。
何も知らない生後11〜12ヶ月の子どもに白ネズミを見せます。その段階では子どもは白ネズミに対して恐怖心はなく、触ろうともします。しかし、実験者は子どもが白ネズミに触ろうとすると、ガンガンとバケツを叩くような音を大音量で聞かせ、びっくりさせます。
それを何度か繰り返すと、子どもは大きな音もないのにもかかわらず、白ネズミを見るだけで怖がるようになりました。
子どもの頭の中で「白ネズミは怖いもの」と条件付けされたのです。また、子どもは他のものにも恐怖を感じるようになりました。例えば、ウサギ、犬、毛皮のコートなど毛でフワフワしているものです。
実験者は「人は遺伝で決まるのではなく、経験がほとんどを決めている」と主張しており、恐怖心の形成も経験の繰り返しによって起きるということが言えるのです。
お化け以外にも怖いもの、虫や動物
子どもがお化け以外に怖いと思うものは他にもありますね。例えば虫や動物などです。
実はこれはママやパパが恐怖の引き金になってしまっているかもしれません。子どもが虫などを触ろうとしたとき「きゃー!」「触らないで!」と大きな声で言ったりしていませんか。
この状況って何かに似ていませんか。そう。「子どもと白ネズミの実験」に似ていますよね。自分の苦手なものを子どもが触ろうとしたらたしかに嫌なことではありますが、冷静に諭すようにしましょう。
もちろん、虫に刺された、動物に追いかけられたなど、子ども自身の経験で生み出される恐怖心もあります。
お化け以外にも怖いもの、病院や血
また、病院や血も、子どもが怖がりやすいものの1つです。
予防接種などでの注射の痛みは子どもにとってインパクトのある経験です。たった1度であっても病院を怖いと思うには十分な経験です。
また、子どもへの脅し文句でもある「そんな悪い子は大きな注射してもらうよ」というようなセリフも、子どもの恐怖心を煽っているでしょう。
転んだり、手を切ったり、血を見るときはいつも痛みが伴う体験です。そこまで痛くなかったり、血を出ているのは他の子だったりしても、血が怖いと感じるのは、自分が体験した嫌なイメージが頭に残っているからでしょう
怖がりの解消法
子どもと白ネズミの実験からわかるように、恐怖に感じるものを増やすのは簡単なことです。また、ネズミに似ているウサギなどのフワフワを怖がるようになったように、怖く感じるものは他のものにも派生していきます。このような他の似たような刺激に対しても反応してしまう現象を、般化現象と言います。
実験では何度か大きな音を出して繰り返していましたが、その子にとってインパクトが強ければ、1度であっても恐怖条件付けはされてしまうのです。そして、いったん条件付けされてしまえば、その恐怖心をなくすことは非常に大変です。
では、どうすれば子どもの恐怖心をなくすことができるのでしょうか。ここからは怖がりの解消法をお伝えしていきます。
①そもそも怖がるようなことをさせない、言わない
まずは、そもそも怖がるようなことをさせない、言わないということです。
例えば、お化けは怖いものとしてインプットされやすいです。まだお化けだけが怖いだけならいいですが、それと何かが結びついて他のものを怖がると厄介です。般化現象により「暗闇」や「木目」などが怖く感じ、「1人でトイレに行けない」「1人で寝れない」などにつながるのです。
ついつい使ってしまいがちな「◯◯しないとお化けがくるよ」というような脅し文句も、これは逆効果です。その脅し文句を使うことで、子どもに「怖い」という感情が湧きます。この「怖い」が「◯◯」という行動にも結びついてしまいます。
「寝ないとお化けがくるよ」と言ったとすると、「お化け」と「寝る」が結びついてしまい、「お化けが来るから寝なくちゃ」というのではなく「お化けが来るから怖くて寝れない」となってしまうのです。
また、子どもは親の見方というものですら、マネしてしまいます。ママが「怖い」と言っているものに対して、同じように「怖い」と感じてしまうのです。
怖いものを教えることも必要なことですが、あまりに度が過ぎると、過剰に怖がりになるだけでなく、世の中が暗く見えてしまいます。本当に怖いものだけを伝えましょう。
②普段怖がることを怖がらなかったら褒める
そして、普段怖がることを怖がらなかったら褒めるということです。
一度子どもが恐怖心を持ってしまったら、どうすればいいでしょうか。そこは気長に取り組んでいかなくてはなりません。
まずは怖がっていた場合、「まったく怖がりなんだから」「なにがそんなに怖いっていうの?」とママやパパの主観で言い聞かせるのはやめましょう。
子どもが過剰に何かに怖がったりしても、心配する必要はありません。ものの感じ方や捉え方は、たとえ親子であっても人それぞれであり、その感覚をないがしろにするのは良くありません。親に馬鹿にされることで、ますますネガティブなイメージを持ってしまい、避けるようになるでしょう。
子どもも恐怖症になりたくなったわけでもありませんし、恐怖心を消したい消したいと思うとドツボで、ますます増してしまいます。そこに「弱虫」というような言葉を投げかけられたらどうでしょう。親の言葉がグサグサと刺さり、子どもの自尊心を傷つけてしまうことになります。
むしろ、「怖いのわかるよ」「ママも昔怖かったんだ」などの声かけをし、怖い気持ちに寄り添ってあげましょう。そして、子どもがなんとか我慢できたとき、前回よりも少しでも良くなったならば、「頑張ったね!」「1人できたね!」と褒めてあげましょう。
さっきとは逆に、恐怖心を持っていたものに対しポジティブなイメージを持つことができ、積極的に取り組むことができるようになってくるでしょう。
ポジティブな声かけをして、すぐにできるようにはなりませんが、場数を重ね、気長に待っていると、ある日急にケロっとして、できたりするものです。
怖がりは弱さではない
恐怖心というのは「臆病」「弱虫」とネガティブなものと思われるかもしれません。しかし、怖いと思うことは、生きる力でもあるのです。
私たちの祖先が生き残るためには、恐怖心が必要でした。
暗闇を怖いと思うのは、暗闇の中で行動すると、崖から落ちたり、獣に襲われたりなどの危険性があり、それを避けるためです。また、虫などを怖がるのも、毒の危険性から自分の身を守るためです。みんなが勇気の持ち主であったならば、人間は全滅してしまっていたかもしれません。
また、怖いと思うことからこそ、情報を集めて知ろうとし、対策を考え、私たちの選択をより良いものにしてくれます。恐怖心を過剰に感じてしまうと、体も心もがんじがらめになり動けなくなってしまいますが、健全にものごとを怖がることで、それを前進する力にすることができます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
1度ついてしまった恐怖心はなかなか消えるものではありません。ですので、怖いと教えるものは道路や線路で遊ぶことなど、本当に危険なものだけにし、むやみに子どもの恐怖心を煽るようなことはしないようにしましょう。
また、子どもに恐怖心が生まれる対象が現れてしまったら、子どもの気持ちに寄り添い、気長に克服できるのを待ちましょう。