世界の昔話から学ぶ、他者に優しい大人になるための考え方。読書からの学びは道徳教育の第一歩。
最終更新日:2021/01/27
あまり知られていない世界の昔話
イソップ童話やアンデルセン童話などは、世界の昔話やおとぎ話の中でも有名なストーリーが数多くあるのではないでしょうか。これらのストーリーは、ただ面白いだけでなく、子どものこれからを形づくる教訓が散りばめられていることでも有名です。
しかし、世界は広いもので、まだまだあまり知られていない昔話はたくさんあり、その中にも、子どもの心の成長へとつながるものが、また山のようにあります。今回は、4つの作品を紹介します。ぜひ、親子で楽しんでください。
幸福な王子
まずは『幸福な王子』です。
美しい「幸福な王子」と呼ばれる銅像がありました。体は金箔に覆われて、目や剣には宝石がついていました。冬が近づいてきたある日、王子は泣きながらツバメに「自分の宝石や金箔を、貧しく困っている人に配ってほしい」と頼みます。
ツバメは動けない王子の代わりに配り、目がなくなった王子の目の代わりになるのでした。しかし、冬になり、暖かいところでしか生きられないツバメは、寒さのため死んでしまい、王子はそのあまりの悲しみから耐えられなくなり、心臓が壊れてしまいました。
王子とツバメは、神様によって天国へ連れて行かれ、幸せに暮らしましたと。
自分がどうなったとしても他人のために力を尽くすことは美しいことです。見ている人がいなくても、見返りがなくても、この王子とツバメのように、他者に親切にできる大人に育ってもらいたいですね。無償の愛は誰がか見ているものです。
最後の一葉
次は『最後の一葉』です。
画家志望のスーとジョンジーは芸術家が集まるアパートに住んでいました。あるとき、ジョンジーが肺炎にかかってしまい「窓から見えるあのツタの葉が落ちるときに、自分も死んでしまう」と思い込んでいて、スーは同じアパートに住むおじいさん、ベアマンに相談します。
ちょうどそのとき嵐がやってきて、今にもツタの葉はすべて落ちそうでしたが、次の日、不思議と葉は1枚だけ残っていました。嵐はひどくなる一方でしたが、その次の日も最後の1枚は散りませんでした。
ジョンジーは生きる希望を見出しますが、スーは複雑な顔をしています。実はあの最後の一葉はベアマンが描いたもので、ベアマンは冬の雨に打たれたせいで、肺炎にかかり亡くなってしまったのでした。しかし、ベアマンは最後に「最後の一葉という最高傑作を描くことができた」と言ったのです。
ベアマンのように自分を投げ打ってでも、他の人のために何かできるというのは、なかなかできることではありませんね。自分が病気になってまでするものではないのでしょうが、犠牲という考え方は子ども心にも知っておいた方がいいかもしれません。
七つの星
次は『七つの星』です。
村に雨が全く降らず、井戸の水もカラカラに干上がってしまい、さらには村の人たちは喉がカラカラで病気になってしまいました。ターニャのお母さんも病気になってしまい、ターニャは水を探しに行くことにしました。
しかし、なかなか見つけることができません。ターニャは泣き、そして疲れて寝てしまいました。目が覚めるとなんとターニャの持っていたひしゃくに水が入っていました。
家にもどる際に倒れている犬を見つけます。かわいそうに思い、犬に水をあげると、ひしゃくの中の水は減らずに、さらにはひしゃくの色も銀色に変わりました。
お母さん、ターニャが水を飲むと、ひしゃくの色は金色になり、中に7つのダイヤモンドが入っているではありませんか。そして、村の人たちにも水を分けてあげました。
やがて村に雨が降ると、7つのダイヤモンドは空に昇って、北斗七星になるのでした。
ターニャもけっして喉が乾いていなかったということはないでしょう。しかし、お母さんのために水を探し、さらには犬にまで水をあげるという、相手を一心に思う気持ちのおかげで、周りを救うだけでなく、ターニャ自身も助かることができました。相手を思いやる気持ちをお子さんにも持って欲しいですね。
ホレおばさん
次は『ホレおばさん』です。
あるところに母親と2人の娘が住んでいました。姉は真面目で、妹は意地悪くなまけものでした。しかし、母親は実の娘である妹ばかりを可愛がり、姉ばかり仕事を押し付けられていました。
ある日、姉は糸巻き棒を井戸の底へ落としてしまいました。そして、慌てて井戸の底へ降りて行くと、底には不思議な世界があり、ホレおばさんと出会います。
姉は、ホレおばさんに「手伝いをしてくれたら使っていない糸巻き棒をあげよう」と言われ、文句ひとつも言わず、仕事を一生懸命に手伝います。そのお礼にと、糸巻き棒だけでなく、金貨を体にくっつけて帰りました。
妹も姉の真似をしようと井戸の底へ行きましたが、ホレおばさんの仕事を手伝ったのは1日だけだったため、油まみれにされて帰りました。そして、その油は落ちることはなかったそうです。
日本昔ばなしにも似たようなお話はあります。周りに優しく、真面目に頑張る人にはいいことがあり、そうでない人には悪いことが起きるというのは、世界共通で子どもに伝えたいことなのかもしれません。
むかし話を通じた心の教育
国語や算数と違い、道徳教育は心を育むものだと言われています。未来を生きていく子どもたちのとって、どのような生き方が好ましいのか。その学びは、物語を読むことからも生み出されます。
今回紹介したむかし話は、ストーリーを楽しむ以上に、その内容から得られる教訓について考えることが大切です。
『幸福な王子』や『最後の一葉』にあるような自己犠牲を超越した親切心、『七つの星』にあるような誰かを想う気持ちの強さなどは、子どもの他者を思いやる気持ちを強く育んでくれます。また『ホレおばさん』に出てくる愚直なまでの真面目さは子どもの力強い成長を導いてくれるでしょう。
普段からママやパパが何かあるたびに一生懸命伝えていても、なかなか子どもに伝わらないことがあるのではないでしょうか。しかし、物語を通じての気づきは、不思議なほどに納得感が高く、子どもに伝わります。これは、ママやパパがいつも言っていたことはこういうことなんだという納得なのです。
文章を読んでそこから学べることは何か?と考える時間は、ご家庭で親子の対話から実施できるものです。親子のコミュニケーション機会を作る上でも大事にしていただきたいです。
ここから始まる読書習慣
今回紹介した昔話を読んでみた上で、読書習慣へつなげていくことも可能です。読書が楽しいと思えるきっかけは、話が面白かっただけでなく、一人で最後まで読み切ったという成功体験なのです。読み切ったという達成感は子どもの自信をつけ、次の本を読んでみたいという気持ちへとつなげてくれます。
自分から「この本を読んでみたい」と言い出す子どもは、あの手この手を使わなくても、自然と本を読むようになります。
しかし、自発的に本を手に取らない子どもにはきっかけ作りが大切です。どのような本でも構いませんが、子どもに「これ読んでみない?」と薦めることがポイントです。そのとき、簡単なあらすじを伝えなくては興味をそそりません。今回の文章のように、あらすじを知ることができると薦めやすくなるでしょう。
まとめ
ここまで世界の昔話を4本紹介しました。これらの話のように、ずっと語り継がれている物語には理由があります。
ストーリー性や登場人物の魅力もさることながら、その話を通じた学びや気づきが重要なのです。ただ面白いだけ、ただワクワクするだけの話も、子どもにとっては大切ですが、ぜひ、心の成長や発達といった観点から、古くから読み続けられている物語の扉を開いていただきたいです。