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子どもが一人で行動するようになったとき、親が気をつけたいこととは?

公開日:2026/02/26
最終更新日:2026/02/26

子どもが成長し、自分の世界を少しずつ広げていく姿は、親にとってうれしいものです。一方で、通学や習い事など、一人で行動する場面が増えるにつれ、交通事故や犯罪への不安を感じることも多いのではないでしょうか。
だからこそ、子どもが安心して一歩を踏み出せるよう、そして送り出す親自身も納得して見守れるような備えが大切になります。
今回は、子どもの成長を大切にしながら家庭でできる防犯や安全教育について、NPO法人日本こどもの安全教育総合研究所の理事長・宮田美恵子さんにお話を伺いました。


就学と同時に増える子どもの「ひとり歩き」
それまでは親と一緒に行動していた未就学の子どもたちも、小学校入学をきっかけに、一人で行動する機会が増えていきます。通学や習い事など、「ひとり歩き」をしなければならない場面も出てくるでしょう。

「基本的には、子どもを一人でお出かけをさせることは避けたほうがよいでしょう」と宮田さんは話します。可能な限り大人の助けを借り、完全に一人になる状況は避けることが望ましいといいます。ただ、現実には一人で行動せざるを得ない場面もありますよね。子どもを「一人でも行動させられる」という判断は、何を基準にすればよいのでしょうか。

「重要なのは、『困ったときに周囲の大人に助けを求められるかどうか』です。自分の状況を言葉で伝え、他者とコミュニケーションを取れるかが大きなポイントになります」

小学校に入学すると、自分の足で登下校することが一般的になりますが、「小学校に上がったから自然とできるようになる」というわけではありません。逆に、一人で行動することに不安を感じる子どもであっても、状況に応じて少しずつ自分の足で登下校していかなければならない場面もあります。

「もう小学生だから大丈夫」と決めつけず、子どもの様子や成長段階に合わせて、どんな場面にリスクがあるのかを想定して備えておくことが大切です。そしてこれは学校だけに任せるものではなく、家庭での取り組みも欠かすことができません。

子どもの安全が脅かされるのはどんなとき?
子どもが一人で行動するようになったとき、特に注意したいのが「交通事故」と「犯罪」です。

<交通事故>
交通事故件数が最も多いのは「7歳」という統計があります。小学校入学をきっかけに、一人で外を歩く機会が増える一方、道路状況や危険を判断する経験が十分でないことから、事故にあいやすい時期だと考えられます。

就学準備の一環として、交通ルールや安全な歩き方を繰り返し確認しましょう。通学路を一緒に歩きながら注意すべき場所を伝えるほか、夕方から夜にかけては姿が見えにくくなるため、反射材などを活用して子どもの存在をドライバーに知らせる工夫も大切です。

<犯罪>
犯罪が起こりやすいのは、通行人や見守りなど、人の目が少ない状況です。できるだけ人通りのある道を選ぶことや、大人による見守り・パトロールといった地域での取り組みも欠かせません。

また、集団登校であっても一人になる時間は生まれます。どんな場面で危険が起こり得るのか、いざというときどう行動するかを、家庭で話し合っておくことが大切です。

いつ、何から始めればいい?家庭でできる安全対策
子どもが一人で行動するようになると、家庭でも具体的な安全対策が必要になります。ポイントは特別なことを始めるというより、日常の中で無理なく取り入れられることです。

・コミュニケーション能力の育成
困ったときに「助けて」と助けを求められることは、安全を守るうえでとても大切な力。「鍵を落としました」「道が分からなくなりました」など、起きていることを自分の言葉で伝えられるかがポイントになります。

ふだんの会話の中でも、「困ったらどう言う?」「こんなときは何て伝える?」と問いかけながら、大人に声をかける練習をしておくと安心です。

・大きな声を出す練習をしておく
いざというときに「大きな声を出すことが大切」と頭では分かっていても、実際に大きな声を出すのは簡単なことではありません。まして、緊急事態ではとっさに声が出なくなってしまうこともありえます。

そこで役立つのが、かくれんぼや鬼ごっこなど、遊びの中で思いきり声を出す経験。「どのくらいの声なら遠くまで届くのか」を体感しておくことで、いざというときにも声を出すイメージがしやすくなります。

・通学路の安全な歩き方を一緒に確認しておく
通学路は、親子で何度か一緒に歩いて確認しておくことが大切です。交通量の多い場所や見通しの悪い交差点、一人になりやすい場所などを実際に歩きながら、「ここはこう気をつけよう」と具体的に伝えていきましょう。

また、「子ども110番」の看板がある家や、困ったときに助けを求められそうな店舗の場所も確認しておくと安心です。可能であれば、入学前に顔を知ってもらっておくのも一つの方法です。

・情報を共有できるような信頼関係を築いておく
子どもが外で経験したことを、自然に話せる関係づくりも大切な備えです。就学前は親と過ごす時間が多いですが、就学後は親の目の届かない時間が一気に増えていきます。

大人が事前に注意点を伝えることはもちろん大切ですが、実は子ども自身の目線でしか気づけない出来事や違和感も少なくありません。その日あったことや感じたことを「報告しなければならないこと」ではなく、「話したくなること」として共有できる関係を築いておくことが重要です。

・身につけるもの・道具を上手に活用する
交通事故を防止する上では、夕方以降に外を歩くことを想定し、持ち物や洋服に反射材をつけておくことで、周囲から気づいてもらいやすくなります。防犯対策で一般的によく知られているのは防犯ブザーですが、これは「持たせておけば安心」というものではありません。どんな場面で、どう使うのかを実際に練習しておくことが大切です。

子どもの一人行動に備える、親の心構えとは?
通学や習い事などで子どもを一人で送り出すことに、不安を感じる親は少なくありません。できることなら、すべての場面に付き添ってあげたい・・・そんな風に思うのは自然な気持ちでしょう。しかし、現実にはそれが難しい場面も多くあります。

「大切なのは、事前の準備をしっかり行うこと、そして普段から子どもと会話を重ねておくことです」と宮田さんは話します。危険をすべて取り除くことはできなくても、備えと関わり方次第で、リスクを減らすことは可能だといいます。

リスクに対する備えは一度きりで終わらせるものではありません。日々の関わりの中で、子どもと会話を重ねていくことが大切です。毎日ほんの数分でも、子どもの話を聞く時間を意識して持つことも、親にとっての大きな備えになります。

外から帰ったときに「今日はどんな1日だった?」「今日はどんな感じだった?」と声をかけるだけでも構いません。子どもの中に「この時間には話を聞いてもらえる」という安心感が生まれることで、些細な出来事や違和感も伝えやすくなります。

また、GPSなどの見守りツールは親にとって心強い存在ではありますが、それだけに頼りきってしまうのは注意が必要です。状況によっては取り外されてしまったり、うまく機能しなかったりすることもあります。ツールはあくまで「補助的なもの」として捉え、子ども自身の判断や行動につながる関わりこそ、安全対策の基本として大切にしたいところです。

子どもを一人で送り出すことは、親にとっても大きな一歩です。不安を抱えながらも、備えを重ね、日々の関わりを積み重ねていくことで、親自身も少しずつ「見守る力」を育んでいくことができるのではないでしょうか。

子どもだけでなくさまざまな人に知ってほしい「ヘルプミーハンドサイン」
これまで見てきたように、子どもの安全を守るためには、日頃からの準備や親子の関わりが欠かせません。その一つとして、声を出さずに助けを求められる「ヘルプミーハンドサイン」という方法があることも知っておくと安心です。

ヘルプミーハンドサインは、もともと女性がDVなどの暴力から身を守るために、カナダの女性財団によって考案されたものです。日本では、防犯や安全対策の一つとして、子どもをはじめ、さまざまな立場の人に活用されはじめており、今回お話を伺っている宮田さんも日本での普及に力を入れています。

特別な道具を持たず、手だけで助けを求められる点が大きな特徴で、声を出したり防犯ブザーを鳴らしたりすることで、かえって危険が高まる場面でも、周囲に気づいてもらう手段になります。

ただし、このサインは使う人だけが知っていればよいものではありません。周囲にいる人がその意味を理解していてこそ、助けを求めるサインとして効果を発揮します。知らなければ、目の前で合図が出されていても、気づくことができないからです。

ヘルプミーハンドサインは、子どもだけのものではありません。言葉で助けを求めにくい状況にある人にとっても有効なサインであり、多くの人が知っていることで、助けを求める側も、受け取る側も行動しやすくなります。

子どもに伝える際は、「怖いときや困ったときに使える方法の一つ」として共有するとよいでしょう。身近な大人がこのサインを知っていること自体が、安心につながります。

子どもが一人で行動するようになる時期は、成長を感じる一方で、不安も大きくなるものです。すべての不安をなくすことはできなくても、日々の関わりや準備を重ねていくことで、親子それぞれが「いざというとき」に備えることはできます。

大人になるということ。その条件のひとつは「自分の身を自分で守れるようになること」といえるかもしれません。家庭での取り組みや社会で共有できる知識を取り入れながら、子どもの自立を支えていけるといいですね。

子どもが一人で行動するようになったとき、親が気をつけたいこととは? 1歳から12歳までの学童型知育教室アデック

プロフィール
宮田 美恵子さん
順天堂大学協力研究員、日本女子大学客員准教授等を経て、特定非営利活動法人 日本こどもの安全教育総合研究所 理事長。研究領域は、安全教育、学校安全・保健、母子保健など。博士(医学)。大学では教職科目「学校安全」などの授業を担当している。
著書に「学校安全のリデザイン ~災害、事件、事故から子どもたちを守るために~」 (学事出版)、「クイズでたのしむ あんぜんえほん」(幻冬舎)、防犯教育紙芝居「ゆうかいするのはどんなひと?」(埼玉福祉会)など。

特定非営利活動法人 日本こどもの安全教育総合研究所
2006年に任意団体「子どもの安全教育総合研究所」設立。2011年研究者、賛同者と共に特定非営利活動法人化し、現在に至る。既存のステレオタイプな安全論ではない、生活者や子どもに等身大の安全教育のあり方を提案、普及することを目指し設立された。