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歴史とロマンを体感!行って、入って、見て楽しむ日本のお城

公開日:2025/10/23
最終更新日:2025/10/23

秋の風が心地よく、外遊びがさらに楽しくなる10月。家族でのお出かけ先に、「お城」を選んでみるのはいかがでしょうか?
「城」は、戦いの場としての歴史だけでなく、美しい建築や自然との調和、地域の歴史やそこに息づくや物語など、さまざまな魅力を秘めたスポットです。見て、歩いて、体感しながら学べるので、親子で楽しむお出かけ先にもぴったり!
今回は、そんな「城」の魅力や楽しみ方について、公益財団法人日本城郭協会事務局の中島陽子さんにお話をうかがいました。


「城」は日本の歴史的建造物の代表格!
「城」は、日本の歴史的建造物を代表する存在であり、日本人だけでなく、海外から訪れる観光客にも高い人気と注目度を誇っています。

ユネスコ世界文化遺産に登録された姫路城をはじめとする「現存12天守」のほか、大阪城・名古屋城・熊本城など、各地にある名城や城跡は、観光地やその土地のシンボルとして親しまれており、旅先で「せっかくだから近くのお城も見に行こう」と立ち寄る家族も増えています。

「『お城めぐり』と聞くと、以前は年配の方が楽しむ少し渋い趣味という印象もありましたが、近年は状況が大きく変わりつつあるんですよ」

公益財団法人 日本城郭協会では、『日本100名城』『続日本100名城』をめぐるスタンプラリーを開催しており、夏休み中に家族でスタンプ帳を完成させて提出する人も少なくないのだとか。また、お城をテーマにした自由研究をきっかけに、すっかりお城の魅力にはまってしまう小中学生も増えているといいます。

お城は今や、大人の趣味にとどまらず、親子で一緒に学び、楽しめる身近なスポットとして注目を集めているのです。

日本の「城」の原点は弥生時代にあり!
「お城は珍しいもの」「一つの国に一つだけあるもの」・・・そんなイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実はお城のあった跡(城跡)は全国各地に数多く存在しており、その数は約4万ともいわれています。

「日本のお城」といえば、石垣やお堀、そして高くそびえる天守閣など、巨大な構造物や建物を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし中島さんによると、日本のお城のルーツは、意外にも弥生時代の“環濠(かんごう)集落”にあるのだそうです。

「当協会では2006年に『日本100名城』を選定しましたが、その中には、城のはじまりとされる佐賀県の吉野ケ里遺跡も含まれているんですよ」

吉野ケ里遺跡がつくられたのは紀元前3世紀。私たちがよく知る天守閣付きのお城(近世城郭)が多く建てられたのは1600年ごろなので、想像以上に古い歴史に驚かされてしまいますよね。

しかし、吉野ケ里遺跡はお堀でぐるりと囲まれた「環濠集落(かんごうしゅうらく)」であり、近世の城のような天守閣があったわけではありません。では、なぜこれが「城」とされるのでしょうか。その秘密は、お堀や柵などの防御設備にあります。

「吉野ケ里遺跡は、堀によって集落が囲まれています。しかしただ丸く囲まれているのではなく、カーブや出っ張り、へこみがあり、柵のようなものが立っていたと思われます。堀は、盗賊や外敵となる動物や人間から集落を守るもの、つまり、防御するための役割を担っていたのです。こうした“守るための工夫”こそが、お城の原点なんです」

城は、見晴らしの良い高い場所に建っていることが多く、天守閣からは周囲をぐるりと見渡すことができます。敵が攻めてきても城から攻撃できるし、敵が攻めにくい、要塞のような造りになっているのです。

「身近な遊具を例に考えてみましょう。たとえばボールを投げて戦うにしても、ジャングルジムの下から上に向かって投げるより、上から投げたほうが有利ですよね。弓矢にも鉄砲にも同じことが言えます。なおかつ上に登る困難さがあるので、高さのある城は、防御がしやすいんです」

吉野ケ里遺跡のような環濠集落から、現在の立派な城郭まで・・・お城の歴史は「防御の工夫」の歴史でもあるのです。お城を訪れたときは、「どう守るための仕組みだったのか?」という視点で見学すると、さらに面白さがグッと広がりそうですね。

地域で違う!お城の特徴
お城というと立派な石垣がイメージされますが、実はお城のつくりは地域によって大きく異なります。たとえば、姫路城や大阪城といった西日本にあるお城は石垣を積んだものが多い一方で、関東には「土の城」が数多く存在するんですよ。

この違いには、地形や自然環境が深く関わっています。西日本は比較的石材が手に入りやすかったため、敵の侵入を防ぐための高く頑丈な石垣を築くお城が多く見られます。一方関東は、良質な石材が少ない代わりに、掘りやすく崩れにくい特徴をもつ「関東ローム層」の土が豊富にあるため、この土を活かした「土の城」が発展しました。関東ローム層の土には「濡れると滑りやすくなる」という性質もあり、敵兵が攻め上がりにくいという防御面でのメリットもありました。

訪れたお城が「石垣の城」なのか「土の城」なのか・・・見比べてみると発見が増えます。さらに、同じ日本国内でも地域ごとに築城の工夫や建築様式が異なることがわかれば、次に訪れるお城がもっと面白くなりますよ!

お城の楽しみ方
見て美しいだけでなく、歩いて、探検して、体感しながら学べるスポットである「お城」。ここでは、親子でお城を訪れるときのおすすめの楽しみ方をご紹介します!

<まずは「近くのお城」を調べてみよう!>
お城といえばまず有名な観光名所を思い浮かべるかもしれませんが、実は身近な場所にも城跡が残っていることがあります。インターネットで「市区町村名+城跡」を検索すると、近くの公園や通学路のそばに意外な史跡を見つけられるかもしれません。さらにそのお城が「いつ建てられたのか」「誰が築いたのか」を親子で調べてから訪れると、現地での見方が一段と深くなりますよ。

<「防御の仕組み」を体感しよう>
現地を訪れたら、まずはお城の外から「攻める側」の気分で歩いてみましょう。「ここからどうやってお城の中に入るんだろう?」「お堀や石垣を越えるのは大変そうだな」など、当時の兵士になったつもりで想像すると、風景がまったく違って見えてきます。

次に、お城の中では「守る側」の視点で周囲を観察してみましょう。天守閣の上から敵がどこから来るのかを見渡したり、狭間(さま)と呼ばれる小さな窓から外をのぞいたりして、「どこで防御すれば有利か」を親子で話し合うと、戦いの工夫がいっそうリアルに感じられるでしょう。

攻める側と守る側、両方の視点を切り替えながら歩くことで、お城に施された“戦いの知恵”を体感できますよ!

<スタンプラリーやイベントで楽しさ倍増!>
公益財団法人日本城郭協会が実施している『日本100名城』『続日本100名城』スタンプラリーは、お城好きの間で大人気!スタンプを集めながら旅をすれば、お出かけの目的地がぐんと広がります。

<現地に行ったらガイドさんに話を聞こう>
観光地として有名な城には、ガイドさんがいることが多いので、話を聞いてみるのもおすすめです。その城の特徴や見どころなども、わかりやすく解説してくれるので、ポイントをしっかり押さえて楽しむ&学ぶことができます。ガイドさんがいなくても、有名なお城にはリーフレットやチラシが置かれているので、それらを見ながらお城を散策してみましょう。

また、実際に見て不思議に思ったことなどがあればそのままにせず、家に帰ってから親子で調べてみると、どんどん面白さが広がります。

お城のQ&A
Q:西洋の城と、日本の城の違いは?
A:もっとも大きな違いは建築様式でしょう。西洋の城は、石やレンガづくりですが、日本の城は、日本独自の美意識を反映させたような木造建築になっています。建築物の歴史としては、お寺などのほうが古いので、お城はお寺の建築技術も取り入れながら建築されたと言われています。

Q:「天守閣」は何のための建物?
日本のお城について、「お殿様(領主)は天守閣に住んでいる」というイメージを持つ人も少なくないのではないでしょうか。でも実は、ほとんどのお殿様は天守閣ではなく、城内にある別の御殿に住んでいたのだそう。天守閣は権威を示す象徴であり、戦時には防御拠点となる場所でした。その一方、火を使う設備がほとんどなく階段も急で、人が暮らすには不便。実際に天守閣に住んでいたのは織田信長だけともいわれています。

Q:城の石垣は何のためにあるの?
A:石垣は城の基礎でもありますが、石垣を積んで土地を高くすることで、権力の高さを表現しています。ちなみに大阪城を築城したのは豊臣家康ですが、その後徳川家によって再構築されました。その際、徳川は権力の優位性を示すために、豊臣時代の石垣の上に4メートルほどの石垣を積み、高さを増しています。

Q:石垣や門に使われる大きな石は、どうやって運んできたの?
A:人力で運ばせました。石垣用の大きな石を人に運ばせる様子を見せることも、権力をアピールする手立てになったようで、「遊女を石に乗せて運んだ」などという伝説もあるんですよ。

お城は歴史に詳しくなくても、親子で気軽に楽しめるお出かけスポットです。公園として整備されているところも多く、散策するだけでも美しい景観や雰囲気を味わえますし、そのお城が築かれた背景や土地の物語を知れば、さらに発見が広がります。実際に見て、歩き、感じることで、お子さんの好奇心がぐっと広がるはず!この秋はぜひ、親子でお城めぐりを楽しんでみませんか?

歴史とロマンを体感!行って、入って、見て楽しむ日本のお城1歳から12歳までの学童型知育教室アデック

プロフィール
中島 陽子さん
長崎県出身。公益財団法人日本城郭協会事務局次長。子どもの頃から城に興味を持っていたが、城にまつわる歴史小説や映画と出会ったことにより、城の世界にはまる。好きな城は熊本城と江戸城。中島さんが所属する公益財団法人日本城郭協会では、日本100名城・続日本100名城スタンプラリー、小中学生城の自由研究コンテスト、日本城郭検定、お城EXPO開催、親子名城見学会などを実施している。

公益財団法人 日本城郭協会 ホームぺージ
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