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正しい呼吸で子どもも大人も健康に!口呼吸の改善に「あいうべ体操」

公開日:2025/06/25
最終更新日:2025/06/25

私たちは普段、特に意識することなく、しかし絶えず「呼吸」を行っています。それだけ大事で基本的な生命活動であるにもかかわらず、「正しい呼吸」を意識したり、「正しい呼吸」について学んだりする機会はほとんどありません。
でも実は、「正しく呼吸をすること」は、子どもからお年寄りまであらゆる年代の健康維持や子どもたちの健やかな成長にもつながっているんですよ!
今回は、歯科医である大村伸介先生に、全身の健康にプラスになる「正しい呼吸」のこと、そして正しい呼吸をするために役立つ「あいうべ体操」について、お話をうかがいました。


「正しい呼吸」とは?
「息ってどこでしているの?」そう問いかけられたとき、多くの人は「鼻」か「口」と答えるでしょう。それでは、「『鼻』と『口』どちらで呼吸をするのが正しい?」と問われたらどうでしょうか。案外、すぐに答えられる人は少ないかもしれません。

大村先生によると、人はその身体のしくみ上、「鼻」で呼吸するのが正しく、赤ちゃんのときから自然と「鼻呼吸」をおこなっているのだそう。

「赤ちゃんがおっぱいやミルクを飲むときを思い出してみてください。口がふさがった状態でも、しっかり鼻で息をしながら飲んでいますよね。いわばこれが、哺乳類である人間の『原点』なんです」

そこから成長するにつれて「食べる」「喋る」といった行動をとるようになり、それがきっかけで口での呼吸も始まると大村先生は話します。

鼻呼吸が人にとって自然で正しい呼吸のしかたであることはわかりました。ではそれはいったいなぜなのでしょうか。その理由は人の鼻の機能と構造にあります。

「『浄水場』に例えるとわかりやすいかもしれません。水をろ過してきれいにする際には、最初から細かいフィルターに通すのではなく、段階を経てろ過していきますよね。人間の呼吸も同様で、鼻から空気を吸うと、まずは鼻毛で埃などをキャッチすることから始まって、奥に進むにつれて粘膜などの細胞レベルの組織で有害物質を取り除き、体内に取り込んでいるんです」

つまり鼻は身体にとってとても重要な「フィルター」の役割を果たしていると言えます。

「冬に外で口から息を大きく吐くと白くなりますが、鼻から吐いても口から吐いた時ほど白くはなりません。口から吐いた息のほうがより白くみえるのは、それだけ多くの熱や水分が放出されているからなんです。鼻を通して息をすることで、熱や水分といった大事なものをできるだけ身体から逃がさずに呼吸ができる、ということが、これでわかるとおもいます」

これも、鼻の役割のわかりやすい例だと先生は言います。息を吸うときも同様で、冬は空気が冷たく乾燥していますが、鼻から息を吸うと、取り込んだ空気が肺に届くまでのあいだに温められ、さらに加湿もされることで、身体の負担が軽減されると言います。

「口呼吸」によってどんな問題が起こる?
このような、鼻の持つ「フィルター機能」が充分に活かされないという点以外にも、口呼吸には見過ごせないリスクが存在します。その一つが、口呼吸を繰り返していわゆる「お口ポカン」になってしまうことにより、お口が乾燥しやすくなるということ。

「口の中は唾液によって常に潤った状態に保たれています。唾液は、虫歯や歯周病の原因となる細菌から口腔内を守る『天然のバリア』の役割を担っています。しかし、口から空気が頻繁に出入りすると、口の中は乾きやすくなり、保護機能が低下します。これによって、虫歯や歯周病のリスクが高まります」

さらに口呼吸は歯並びにも影響します。恒常的に口呼吸をしていると、風を通しやすいように歯の位置が変わってしまいます。さらに、口が開いた状態では唇や頬の筋肉が歯のアーチを外側から保つ力を発揮できず、結果的に歯列の乱れが生じてしまいます。さらには舌の位置。これにも変化が生じ、歯のアーチを内側から保つ力を発揮できないだけでなく、鼻内部への影響にも至ります。

呼吸の出入口が「鼻」か「口」か・・・たったそれだけの違いが、口腔内だけでなく全身の健康に大きく影響するとなると、「正しく鼻で呼吸をする」ことがいかに重要かわかるはずです。

近年では、子どもたちの口のまわりの筋肉や舌の力が十分に発達していないケースが増えているといいます。その背景には、食生活も関係しています。

「食事の際、『前歯と奥歯の使い分け』をして食べることも大切なんです。食生活のトラブルは、『くちゃくちゃ食べ』や『口ポカン』などの問題につながります」

口呼吸の解消には「あいうべ体操」が有効!
本来、口周りと舌の筋肉は食事や会話など日常生活の中で自然に鍛えられてきました。しかし、現代はその刺激が不足しがちで、成長に必要な筋肉が十分に育たず、口元がたるんだり、機能が低下するケースも増えているといいます。

こうした不足を補うためには、意識的なトレーニングが必要であり、その方法の一つとして効果的なのが、「あいうべ体操」だと先生は言います。

「あいうべ体操とは、母音の『あ』『い』『う』の口の形と舌の動きを意識的に大きく動かすトレーニングです。口を大きく開けたり、横に引いたり、すぼめたりして、はっきりと発音することで、口周りと舌の筋肉をしっかり鍛えます。最後の『べ』で舌の動きを加え、口の機能向上と維持を目指します」

「あいうべ体操」はなぜ口の機能向上につながるのでしょうか?

「あいうべ体操の目的は、舌と口周りの筋肉を正しく鍛え、機能を高めることにあります。赤ちゃんが母乳を飲めるのは、舌で乳首を上あごに押し付ける動きをしているからで、これは舌が本来、上あごに位置しているからこそ可能になります。しかし成長とともに舌の位置が下がり、口呼吸や飲み込みの機能低下を招くことがあるんです」

あいうべ体操では、舌をしっかり動かし、自然に上あごに収まるように導くことで、正しい舌の位置へと導きます。また、同時に口をしっかり閉じる力=口周りの外側の筋肉も鍛えることができ、口呼吸の予防や発音、嚥下機能の改善にもつながります。こうした点から、あいうべ体操は口と舌の本来の働きを獲得するための効果的なトレーニングと言えるのです。

メリットがたくさんある「あいうべ体操」
「あいうべ体操」によって、正しく鼻呼吸ができるようになると、子どもにも大人にもメリットがたくさんあると大村先生は言います。

・成長期の子どもたちの健やかな成長をサポート。歯並びの予防も期待できる
・年齢問わず、身体の免疫力がアップし、風邪などの感染症やアレルギー疾患を予防
・副交感神経と交感神経のバランスが整い、心身ともにリラックス
・睡眠の質が向上することで、寝覚めもスッキリ。日中の集中力もアップ
・表情筋を鍛えることで表情が豊かになり、顔のたるみやむくみの改善、小顔などの美的効果も
・高齢者の場合は、誤飲や誤嚥予防にもつながる
・歯周病、歯石沈着、着色、口臭等の予防
・姿勢がよくなるので、体幹も鍛えられる

2016年の熊本地震の際も、「あいうべ体操」を取り入れた避難所では、肺炎による災害関連死を0にできたというデータもあるのだそう。また大村先生自身も、「あいうべ体操」を始めたことで、体調にプラスの変化があったといいます。

「私はもともとアレルギー体質で、鼻とのどが弱いんです。鼻は手術したのですが、のどはずっと悪くて、年に何度か扁桃腺が腫れて、点滴治療をするほどでした。ところが10年ほど前にあいうべ体操に出会い、毎日行うことで正しい鼻呼吸ができるようになってからは、一度ものどの腫れを治す点滴治療をしていません。あいうべ体操以外にも鼻呼吸のための取り組みはやっていますが、私自身、身をもってあいうべ体操の効果を実感しているので、ぜひ皆さんにも広げていきたいと思っています」

「あいうべ体操」をやってみよう!
それでは実際に、あいうべ体操に取り組んでみましょう!

●やり方のポイント
・「大げさに口を動かし、アナウンサーのようにしっかり発音しよう」というイメージで、楽しくやってみましょう。
・子どもは「ゆっくり」という動作が苦手で、つい早口になってしまうことも。そんなときは、「あ、あ」「い、い」「う、う」「べ、べ」という風に、2回続けて発音(2音目を強めに)してみると良いでしょう。
・幼稚園や保育園で「あいうべ体操」を導入しているところも増えています。きらきら星などの歌に合わせてやれば、もっと楽しくできますよ!

●何歳からできる?
・少しおしゃべりができるようになった時期から始めてみましょう。2歳ぐらいの子どもでもできますよ!

●何回やればいい?
・1日30回を目安にやってみましょう。1度に30回、もしくは数回に分けても良いです。朝・昼・晩に10回ずつの30回や、朝・夜に15回ずつでもOK。自分がやりやすいタイミングで、毎日続けることが大切です。

●いつやるのがおすすめ?
・身体が温まっているときのほうが、動きがスムーズになります。朝、お布団のなかで身体が温まっているとき、お風呂で温まっているとき、髪を乾かしながら、などがおすすめ。

・朝なら「10回あいうべ体操をやったら起きよう」、お風呂なら「10数えたらあがろうね」のかわりに、「10回あいうべ体操をやったらあがろうね」と声掛けして、親子で一緒にやってみましょう。

取材後にスタッフも「あいうべ体操」に取り組んでみました。実際にやってみると、顔や口まわりの筋肉が想像していた以上に大きく動くようになることにびっくり。同時に、普段会話をしたり食事をしたりといった口を使う動きをする際、「あいうべ体操」で実感できる口・顔まわりの筋肉を普段あまり使っていなかったことがよくわかりました。

呼吸は人間にとってあまりにも日常的で自然な動作。ですから、「鼻呼吸が正しい」と言われて、その時は「できる!」と思っても、常に鼻呼吸を意識しながら生活することはできません。だからこそ「習慣化」が必要であり、そのために日々のトレーニングが必要なんですね。

「近年は、予防歯科という言葉もよく知られるようになりました。歯科は病気や歯並びの治療をするところですが、その前に、病気にならないように、矯正をしなくてもすむ歯並びになるように、さらにはお口の健康を身体全体の健康につなげていく役割こそが、本来の『予防歯科』だと考えています」と話す大村先生。

誰でも気軽に、そしてどこでもできる「あいうべ体操」で、正しい呼吸を促して健康を促進!今日から家族みんなで取り組んでみましょう!

正しい呼吸で子どもも大人も健康に!口呼吸の改善に「あいうべ体操」 1歳から12歳までの学童型知育教室アデック

プロフィール
大村 伸介先生
おむら歯科医院(新潟市中央区)院長。息育指導士(認定講師)。あいうべ協会新潟支部長。日本歯科東洋医学会、日本病巣疾患研究会会員。新潟県発達障がい等対応医療従事者。日常の診療において『正しい鼻呼吸』を伝え、歯周病や歯並びなどの治療や予防を行っている。また、発達特性のある子どもへの対応、地域の子どもたちの通学路の見守りなど、未来を担う子どもたちを支援している。趣味は料理、ドローン空撮、スキー。

制作協力 あいうべ協会
息育、口呼吸問題の第一人者として知られる、内科医の今井一彰氏(みらいクリニック院長)が考案した、『あいうべ体操』をベースに、正しい鼻呼吸の素晴らしさを伝え、健康で豊かな人生をサポートするための活動を行う。