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子どもと一緒に取り組む!「防災教育」と災害に対する備え

公開日:2024/09/04
最終更新日:2024/09/03

毎年のように大きな自然災害が発生することで、「災害大国」ともいわれる日本。今年、2024年は元日から能登半島で最大震度7を記録する地震が発生し、甚大な被害をもたらしました。
いつ発生するとも知れないこれらの災害に対して、日頃の備えや心構えが欠かせないことはわかっているものの、何となく後回しになっていたりしませんか?
毎年 9月は「防災月間」。そこで、今だからこそ知りたい、防災教育と子どもと一緒にできる防災対策について、一般財団法人 防災教育推進協会の濱口和久理事長にお話を伺いました。


ますます重要性が高まる「防災教育」
今年、2024年の元日に発生した「能登半島地震」。被害の大きさもさることながら、新しい年を迎え、お祝いムードに包まれる「元日」でもこうした災害は起こりうる、ということに衝撃を受けた方も少なくないのではないでしょうか。

また大雨による風水害や土砂災害なども毎年のように日本各地で発生。世界的な気候変動の影響もあり、その被害はさらに頻繁に、そして甚大なものになってきています。

こうした中で昨今、文部科学省やその他自治体・教育委員会、私立の学校などの教育現場、あるいは市民レベルでも、「防災教育」に対する関心やその必要性を叫ぶ声はますます高まりを見せています。

「従来行われてきた防災教育は、どちらかというと『受け身』のものが中心でした。しかし本来、防災教育というのは、自ら能動的に取り組める、判断できる、活動できる人材を作るためのもの。『自分の命は自分で守るんだ』ということを自覚し、理解して、そのためにどうしたらよいかを考える力や人間力を含む『防災力』を身につけることが、防災教育の基本だと思います」

個人でも必要な防災教育への取り組み
「防災教育に対する意識が、以前に比べて高まりつつあるのは間違いありません」と濱口さん。しかし「それに対して実態や実行動が伴っているかというと、悲しいかな『追いついていない』というのが現状です」と濱口さんは続けます。

「たとえば文部科学省であれば、防災教育だけを所管する部署があるわけではなく、他分野と兼務しているのが現状です。学校の現場においても、指導するのは学校の先生ということになるのですが、その先生方も『防災』に関して専門的な知識を持っているわけではありません」

こうした専門人材や機関の不在に加え、予算や学校教育に防災教育を取り入れるだけの時間が確保できないといった事情もあり、防災教育の必要性は理解されながらも、教育体制の整備が進んでおらず、子どもたちに十分な防災教育が行われているとはいえないのが現状です。

そうした中で子どもの防災意識を高めていくためには、個人単位での取り組みも欠かせないものになります。濱口さんが理事長を務める一般財団法人 防災教育推進協会が実施している「防災検定」「ジュニア防災検定」もその一つだといいます。

「ジュニア防災検定」は、防災に関する知識をはかる筆記試験のほか、防災について家族や友達など近しい人と話し合ってその内容をまとめる「家族防災会議レポート」という課題と、防災に関する研究や工作などに自由に挑戦する「防災自由研究」を総合して判定する試験です。

「私たちとしては、『全員が合格してほしい』という思いで試験を実施しています。合格することで防災に対するモチベーションをもち、防災意識を持ってもらうきっかけにしてほしいと考えています」

防災意識を高めるために、家庭ではどんなことをすれば良い?
「小さな子どもは素直に話を聞く傾向があって、どのようなことでもきちんと教えればスッと理解してくれます」と濱口さん。だからこそ、防災教育に小さなころから取り組んでほしいと言います。では実際、家庭ではどのように防災教育に取り組めばよいのでしょうか。

まず基本的なこととして、災害や防災を「自分ごと」として捉える意識が必要だと濱口さんは言います。

「大きな災害に対して心を痛めることはあっても、自分自身が体験していなければ、どうしても他人事になってしまいがちです。『自分が同じような場面に遭遇したらどうするか』とか『自分も同じ状況に追い込まれる可能性があるんだ』と、自分ごととして災害のことをとらえる意識はとても大切です」

こうした意識を持ってもらうために、まずは日常生活にあるものを使って防災を身近に感じられるような語りかけや意識づけからスタートしてみましょう。

「必ずしも直接的に『防災』について話す必要はないんです。たとえば日常生活の中では、災害が起こった際にニュースなどで映像を見ることもあるかと思います。その時、ただ『怖いね、かわいそうだね』と言って終わるのではなく、『今水が出なくなったらどうしようか?』とか『ペットボトルの水ってうちにどれぐらいあったらいいかな?』という風に、子どもが興味・関心を持つような語りかけをしたり、どうすればいいかを親子で一緒に考えたりすることが、防災意識を高める第一歩になると思います」

また、子どもにとっての日常や普段の行動から防災意識を高めるために親子でできる取り組みのひとつとしておすすめなのが「防災さんぽ」。たとえば、子どもの通学路を親子で一緒に歩いてみるのがおすすめです。

「子どもが通学に使う道を親子で一緒に歩き、地域のハザードマップと照らし合わせながら、ブロック塀や側溝、川などの『危険な場所』や、避難できそうな公園の場所(安全な場所)などを親子でチェックしていきましょう」

濱口さんによると、親よりもむしろ小さな子どものほうが、地域や町のことに詳しいことはよくあるのだとか。また子どもの目線の高さには、大人が気づかないような意外なリスクが見えていることもあるといいます。子どもと一緒に歩き、同じ目線に立って防災について考えることは、親の防災意識を変えるきっかけにもなるかもしれませんね。

意識を高めるだけでなく、日々の備えも大切に
子供たちに防災意識を高めてもらう一方、自然災害が発生した際でも安全な住環境を整えたり、避難生活に必要な物を準備したりといった、日々の備えをすることも、親としてはもちろん大切です。地震や水害など、特に起こりやすい災害への備えとしてどんなことをすればよいでしょうか。

●家の中の危険な場所や備えをチェック!
まずは日常の多くの時間を過ごす家の中の安全性からチェックしましょう。濱口さんによると「最も危険なリスク時間帯は深夜、寝ている時間」とのこと。寝室を中心に家具などの配置や転倒対策をしっかりと行いましょう。

・寝室には基本的に倒れるもの(家具や本棚など)は置かない。置かざるを得ない場合は、転倒対策をしっかりと!
・メガネはすぐに手の届くところに置いておく。コンタクト使用の人も、メガネの準備を
・地震の後は、ケガのもとになるガラスの破片などが散乱していることも。素足で部屋を歩かないようにスリッパや予備の靴を枕元に置いておく
・懐中電灯もすぐに手の届くとことに置く。スマホのライト機能を使用することも可能ですが、充電できないこともあるので注意が必要です
・万が一、建物が倒壊したときに、自分の存在を知らせるために笛も準備

こうした安全チェックをする際にも「子どもの目線」はとても大切。危険な家具がないかどうか親子でチェックしたり、懐中電灯を置いておく場所なども、一緒に確認するとよいでしょう。

●備蓄品と持ち出し品を準備しよう!
まず「備蓄品」と「持ち出し品」は異なるという点には注意が必要です。備蓄品は自宅で避難生活するために必要なもので、水や食糧などを十分な数用意する必要があります。一方、持ち出し品は避難所など、家を離れて避難生活をするために最低限必要なものをそろえていきます。

「市販されている非常持ち出し品のセットには、確かに色々な物が入っていますが、必ずしもそのすべてが自分たち家族にとって必要なものとは限りません。家族にとってなくては困るものや簡単には手に入らないもの、たとえば薬や子どもの年齢によってはミルクなど、本当に必要なものは何かを考え、オリジナルの非常持ち出し袋を作ることをおすすめします」

また、非常持ち出し袋は「一家でひとつ」という形ではなく、家族一人ひとりがそれぞれ背負える重さの範囲で用意するのもポイント。子ども用なら、背負いやすい軽いリュックなどを選び、必要なものを入れて、万が一のときにはそれを自分で持って避難できるように準備しておきましょう。

自分専用のリュックに、自分が必要だと思うものを選んで詰めていくという作業は、子どもも楽しみながらできる防災への取り組みの一つかもしれませんね。

「100回災害が起これば100個のパターンがあります。一口に『地震』といっても同じ地震はない、ということを私はいつもお話ししています」と濱口さん。「すべて完璧にはできないわけですから、可能な限り、様々なパターンに対応できるための日頃の訓練だったり、知識、心構えをしていくことが大事なんです」濱口さんは力を込めます。

「ジュニア防災検定の試験のなかで、『あなたが避難所でできることを書きなさい』という問題がありました。それに対し、ある小3女の子は自分よりも小さな子どもたちを集めて「あやとり」をして遊んであげる、と回答しました。こうした発想は大人からはなかなか出てきませんし、子どもも避難所で十分に活動・活躍できると、私は感じました」

災害に遭遇したとき、辛い・苦しい・大変という思いにとらわれるだけではなく、「自分にはこんなことができる!」と、いかに自分の気持ちを前に向けることができるか。「防災力」を身につけるということは、「人間力」を磨くということにも繋がるのかもしれませんね。

子どもと一緒に取り組む!「防災教育」と災害に対する備え1歳から12歳までの学童型知育教室アデック

プロフィール
濱口 和久さん
一般財団法人 防災教育推進協会 理事長。熊本県生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒。名古屋大学大学院環境学研究科博士課程単位取得満期退学。防衛庁陸上自衛隊、日本政策研究センター研究員、栃木市首席政策監(防災・危機管理担当兼務)などを務め、現在、拓殖大学大学院地方政治行政研究所特任教授・同大学防災教育研究センター長などを務める。2024年より、一般財団法人 防災教育推進協会の理事長に就任。日本危機管理学会「学術貢献賞」を受賞。

制作協力
一般財団法人 防災教育推進協会
同協会では、防災検定、ジュニア防災検定、防災講習、防災出前授業・防災講演会・防災研修、防災イベントなどを実施し、一人ひとりの防災意識の育成や防災知識の向上を図る活動を行っています。