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小さな自然づくりに挑戦!おうちでビオトープをはじめてみよう

公開日:2025/04/23
最終更新日:2025/04/23

小さな鉢や水槽、池などの「ビオトープ」。自然と触れ合う機会が少ない子どもたちでも、自然を身近に感じながら、その変化を観察したり学んだりできることが魅力です。そこで今回は「あおぞら自然共育舎」代表の早川広美さんに、ビオトープとは何か、作りかたや楽しみかた、注意点などについて伺いました。


ビオトープってなに?

まず、「ビオトープ」とはどのようなもののことを言うのでしょうか。

「ビオトープのビオ(bios)は、生き物。トープ(topos)は場所。直訳すると、生き物が生息する場所、という意味です」

ビオトープというと「水辺」をイメージすることが多いのですが、早川さんによると、水辺に限らず自然の生き物が生息する場所はすべてビオトープというのだそう。今回は、鉢や水槽などを使ってできる「水辺のビオトープ」についてお話を伺いたいと思います。

水中や水辺の生き物の飼育といえば「アクアリウム」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。アクアリウムは、水族館や自宅の水槽などでろ過装置や照明などを使って魚や水草を人が管理しながら飼育・鑑賞するもの。それに対して、ビオトープでは生き物を「飼う」のではなく、水草や魚、昆虫などが棲む小さな生態系が、人の手助けもいれながら「創られていく」ものです。

アクアリウムが美しさや飼育のしやすさを重視して理想の風景を作るものだとすれば、ビオトープは生き物が自然のサイクルで共存できる、「自然環境そのもの」を作りだすもの、と言えるかもしれません。

「飼育だと餌をあげたり、水をキレイにしたりして育てなければなりませんが、ビオトープの場合は、最初に人工的につくった水辺にいろいろな生き物が自然にやってくるのを待つというのが基本的な考え方です。ただ、いろいろな生き物に来てもらうためには、人間も生態系の一員として草を刈る、残すなど少し環境を整えてあげることは必要です。また、もし『蚊が発生するのが心配だ!』ということであれば、ボウフラを食べてくれるメダカを1~2匹入れるのは良いでしょう」

自分好みの金魚や熱帯魚などを生き物を「飼う」のではなく、あくまでも自然を「創る」ことがビオトープの考え方。たとえばメダカも鑑賞用として飼うと餌やりが必要ですが、ビオトープに棲むメダカには、ボウフラ対策という「役割」があるのもおもしろいところですね。

ビオトープの魅力とは?
庭先やベランダに小さな「自然」を作りだすビオトープ。ビオトープを作ると意外と多くの生き物が立ち寄ってくれるのだとか。とくにトンボは、ビオトープを設置すると比較的簡単に姿をあらわしてくれる昆虫なのだそう。

「やってきたトンボの姿を見るととても嬉しくなりますし、もしトンボを見ることができなくても、いつの間にかトンボが産卵していて、水のなかを調べたときに、ヤゴ(トンボの幼虫)を発見することもあるんですよ」

マンションなどでも環境にもよりますが、5階程度の高さならやってくるトンボもいるのだそう。トンボがビオトープに卵を産みに来てその卵からヤゴがふ化し、ヤゴがやがてトンボになってどこかに飛んでいく…そんな生き物の営みや季節ごとの変化などを身近で見られることが、ビオトープの魅力のひとつです。

また、手をかけすぎずに楽しめるのもビオトープの魅力。人が管理しすぎないことで、生き物自らがバランスをとって生態系を保つ仕組みを楽しむことができます。

◆ビオトープを見に行ってきました!
さて今回は、早川さんのご案内で、川崎市の「北加瀬こども文化センター」におじゃまし、実際に敷地内に設置されているビオトープを見せていただきました。

こちらがビオトープ。土に容器を埋め込んでつくられています。「これがビオトープですよ」と教えていただかなければ、気づかないかもしれません。それだけ自然に同化しています。

ちょっと中を覗いてみるとメダカの姿が。撮影したのは寒い2月でしたが、落ち葉や水草の茎の陰で何匹も元気に泳いでいる姿を確認できました。

「中の土をすくって観察してみると、生き物がいるんですよ」と早川さん。実際に網で水の中をすくってみると、大きなヤゴや、にょろにょろ動くイトミミズの姿を発見できました!

ヤゴが何匹もいるということは、先ほどのお話のように、このビオトープにトンボが卵を産みにやってきたということ。今回見学したビオトープは半畳分ほどの大きさですが、その中にもこれだけ多くの生き物が棲んでいるなんて驚きです!

地域とつながるビオトープ
ビオトープのもうひとつの大きな魅力は、地域とのつながり。今回見せていただいた北加瀬こども文化センターのビオトープも、近隣の池や水辺のビオトープ、緑地とつながっているからこそ、さまざまな生き物たちがやってくるのだそう。

みなさんのおうちの近所にも、池がある公園や小川がありませんか?学校などにも小さな池があったり、生徒たちがビオトープをつくっていたりします。生き物たちは、そうしたいくつかのビオトープを、移動中の休む場所や、卵を産む場所として利用しているといいます。

ですから自宅にビオトープをつくれば、お散歩や公園に行ったときに見たトンボたちが、我が家にもやってくるなんてこともあるかもしれません。

「私はトンボがどれぐらいの距離を飛ぶのかといった調査にも参加しています。毎年夏に、トンボの羽にマーキングをして放つのですが、30㎞くらい離れたところまで飛んでいったというデータもあるんです。もちろんトンボたちは一気に30㎞飛ぶのではなく、餌を食べたり休んだりしながら飛んでいきます。その通り道になるのが水辺ビオトープや緑地なので、いろいろな場所にビオトープがあり、それを緑地がつないでいれば、生き物たちもとても嬉しいと思いますし、自然環境を守ることにもつながりますよね」

トンボ以外にもアメンボやカエルなど地域には様々な生き物が棲んでいます。自分が手がけたビオトープに、どんな生きものがやってくるかによって、自分が暮らす地域にはこんな生きものが棲んでいるんだ!ということを知ることができます。生きものが、地域の自然環境について教えてくれるのです。そのようにして地域とのつながりを感じ、「我が町の新たな魅力」を発見できることもまた、ビオトープの魅力と言えるでしょう。

ビオトープをつくってみよう
自宅でもできる小さなビオトープのつくり方を、早川さんに教えていただきました。

始める時期は春がおすすめ!
4月にビオトープをつくると、早ければ5月にはトンボがやってきくれることも。卵を産み、夏にはヤゴを見ることができるかも!

用意するもの
<容器>
・タライ、いらなくなった衣装ケース、トロ箱など
・素材はプラスチックでもOK。ただし、金属製のものは、夏場に熱を吸収して熱くなるので避けたほうがよいでしょう。
・形はなるべく正方形や丸に近いものがベスト。あまりに細長いものでなければ長方形もOKです。
・深さのめやすは20cm程度以上。水面の広さは小さ過ぎると生きものが気づきにくいので、長い所が40~50cm程度以上あると良いでしょう。
・ビオトープ用として販売されているものもありますが、専用のものを使わなくても代用できます。

<赤玉土(小粒)>
・自然の環境を作りだす上で欠かせないのが土。水草が根付いたり、水を浄化する微生物が繁殖するために必要です。ホームセンターなどで購入可能です。

<水草>
・ビオトープ用の水草を購入してもかまいませんが、できれば近隣の公園などの水辺にあるセリやミゾソバなどの水草を少しもらってきて植えるのがよいそう。公園の植物をもらう場合は、管理者の許可が必要です。
・水草を購入する場合は、外来種や園芸種ではないものを選びましょう。また、池などからもらったものを入れるときは、生態系に悪影響を及ぼす外来種(アメリカザリガニやジャンボタニシなど)が一緒にくっついていることがあるので、それらは必ず取り除きます。

<メダカ(1~2ペア程度)>
・メダカは入れなくてもかまいませんが、初期のボウフラ対策として、あるいは最初から何か生き物がいたほうが観察するときに楽しいという場合は、メダカを入れても良いでしょう。
・ヒメダカや観賞用のメダカも売っていますが、ビオトープ用には自然に生息している種に近い黒メダカがよいでしょう。

つくり方
材料が揃ったら、さっそくビオトープづくりを始めましょう。

置き場所を決めてそこに容器を設置し、赤玉土を入れます。ポイントは水深が浅いところから徐々に深くなっていくように土を入れること。最も深いところの水深が10~15cm程度はあるようにしましょう。
土を入れたら水草を植え、水(水道水)を入れます。メダカを入れる場合は1日以上経ってから入れます。メダカは目が上についていて、水面に落ちてきた虫などを食べるので、水深が深くなりすぎないように加減しましょう。

置き場所
庭やベランダで雨が当たる日当たりがよいところに置きましょう。エアコンの室外機からは少し離れた場所に置きます。

これで家庭用のビオトープは完成です。

ビオトープの管理の仕方は?
基本的には自然に任せてOK。メダカの餌やりや、水換えも必要ないとのこと。「飼育」が目的ではありませんから、日当たりのよい場所に移動させたり、雨の日は中に入れるなどの手間をかけなくても大丈夫。日当たりが悪くても、逆に日陰が好きなトンボが卵を産みに来たりするので、日当たりのことはあまり意識する必要はありません。

ただし、とろろこんぶのような藻(アオミドロ)が急激に増えて異臭がする場合は、少し取り除いてあげましょう。アオミドロのなかにいることが好きな生き物もいるので、全部は取り除かないようにします。

水のなかの植物がまったく育たないときは、栄養が不足しているかもしれません。そんなときは、黒土を少し足してあげるようにしましょう。

もし水中にヤゴがいるとわかった場合は、羽化の時が来たときに無事に大空へ飛び立てるよう、そっと手助けをしてあげましょう。水辺に木の枝や棒を立てたり、高さ20cm以上の水草を植えたりすれば、ヤゴがしっかりと掴まって羽化できる場所ができます。もしかしたらヤゴが羽を広げてトンボになり空に舞い上がるシーンに立ち会えるかも!

ビオトープ観察のポイント
ビオトープは日に日にいろいろな変化がを見せます。水草やメダカの様子を観察するのも楽しいですし、北加瀬こども文化センターで見せていただいたように、小さな網で水中をすくって観察してみると、ヤゴなどの生き物を発見できるかもしれません。

最初は殺風景で、「これが本当にビオトープ?」といった状態でも、日を追うごとにだんだん変わってきて、やってくる生き物も変わってくるそうです。

「私はビオトープの水草が増えすぎた時には刈り取って、それを活かして子どもたちと一緒にちょっとした飾りをつくったりすることも楽しんでいます。そんなプラスαの楽しみも、ビオトープ観察の魅力だと思います(※写真は水草(カンガレイ)で作った輪飾り)」


おうちに設置したビオトープは、身近に置いておける自然であり、ご自宅の庭先やベランダが地域の自然と繋がる場所です。一度つくればさほど手間いらずで自然や生き物の観察ができますし、年齢を選ばず楽しめるのも魅力的。4月はビオトープづくりにはベストの時期。ぜひ家族でつくってみてくださいね!

小さな自然づくりに挑戦!おうちでビオトープをはじめてみよう1歳から12歳までの学童型知育教室アデック

早川 広美さん プロフィール
大学卒業後、人材育成の会社で野外行動学習のインストラクターに就いたことがきっかけで、「自然と人を結ぶ仕事をしたい」と考えるようになる。2000年よりフリーランスとして自然体験・環境教育の仕事を開始。2007年に「ビオトープ管理プロ養成講座」(人と自然の研究所主催)を修了。同年よりあおぞら自然共育舎主宰。自然体験から1人1人が気づくこと、感じることを大切にし、自然も人も1つとして同じもの・ことがない、その魅力を感じる日々は何年経っても変わらない。ビオトープ管理士だけでなく、ネイチャーゲームインストラクター、ハーバルセラピストとしても活動中。

制作協力 公益財団法人かわさき市民活動センター「北加瀬こども文化センター」
地域を基盤に、遊びを通じて子どもの健全な育成を図る児童福祉施設。川崎市幸区の閑静な住宅街に位置し、近隣には熊野台公園・夢見ヶ崎動物公園のほか福祉活動ホーム・民間の幼稚園などの児童施設も。自然環境にも恵まれた環境の中、ものづくりや読み聞かせ&コンサートなどさまざまなイベントを企画・開催する。