
「伝える力」も自信もアップ!プロから学ぶ『声の出し方』
最終更新日:2025/02/28
「声が小さくて自信がなさそうに見える」「人前で話すことを恥ずかしがる」など、話すことが得意ではない子どもはたくさんいます。その一方、近年では小学校時代からグループワークや探求発表を行うことが多くなり、「話す」スキルは誰にとっても欠かせないものとなっています。正しい声の出し方や話し方を身につけて、大きな声でハキハキと話せるようになれば、友達とのコミュニケーションや発表などにも、自信を持って臨めるようになるハズ。
そこで今回は、一般社団法人日本声磨き普及協会代表の佐藤恵さんに、話し方・伝え方の大切さや、自宅で気軽にできるトレーニング法などについてお話をうかがいました。
◆発声や話し方は生まれつき?
普段、何気なく交わしている会話。話す声がクリアだったり、とても聞きやすい話し方をする人がいる一方で、声が小さかったり、ぼそぼそ話す人の話は聞き取りづらかったりしますよね。こうした「話し方」は個々の性格や生まれつきのものなのでしょうか?
「声の出し方や話し方は、決して生まれつきのものではありません。トレーニングすれば誰でも相手に伝わりやすい話し方ができるようになりますし、未就学児からでもトレーニングをすることはできるんですよ」
さまざまな世代を対象に、正しい発声や話し方の講座を開催している佐藤さん。そこには年配の方も多く訪れるといいます。
「話し方や声、滑舌に自信がない、緊張すると早口になる、頭が真っ白になって自分でも何を話しているのかわからなくなってしまう、声が小さいので損をすることが多い…みなさん声に関してさまざまなお悩みを抱えていらっしゃいます。しかも、そうしたお悩みは、今に始まったことではなく、『子どもの頃からだった』という方がほとんどなんですよ」
長年に渡って「話し方」に悩みを持っていた中高年~ご年配の方でも、正しいトレーニングをすれば、みちがえるように声が出せ、自信を持って話ができるようになると佐藤さんは言います。
「話し方」にコンプレックスを持ち、そのコンプレックスに悩まされる人は少なくありません。その原因のひとつとして佐藤さんが挙げるのは、日本の学校で「話し方」についての教育を受ける機会が少ないということ。そういわれてみると、「話し方」や「声の出し方」について、時間をかけて学校で教わったことのある人は少ないのではないでしょうか。
「日本の場合、『書くこと』に関しては、小学校で鉛筆の持ち方から始まって、字の書き方、文章の書き方を段階的に教え、作文や感想文などを書くといったトレーニングを受けています。でも『話すこと』となると、指導を受けたことのある人は少ないのではないでしょうか。国語の授業ではよく『音読』を行いますが、そんなとき先生からよく『はっきりとした大きな声で教科書を読みましょう』と言われます。最初からできる子はいいですが、中には『どうしたらはっきりとした大きな声が出せるのかわからない』という子もいるんです」
◆まず大切なのは「家庭での会話」
「はっきりとした大きな声」を出すにはどうしたらよいのでしょうか。意識するポイントやトレーニング方法などをご紹介する前に、まず大切にしてほしいこととして佐藤さんが挙げるのが「家庭での会話」です。
「子ども向けの教室で、最初に『どんな時に声を使いますか?』というアンケートをとるのですが、『学校で発表をするとき』とか『友達と話すとき』という回答がほとんど。その一方、『家族で団らんするとき』などの回答はほとんど出てこないんです」
子どもは、小さな時はよく話しかけてくれて、親もコミュニケーションを楽しみますが、成長してくると次第に煩わしくなってきて会話が少なくなりがち。そうするとやがて、家庭内でのコミュニケーションが止まり、声を使う機会が減っていきます。
「こうした『家庭内でのコミュニケーション不足』」も良い声が出せなくなってしまう原因のひとつです。まずは『子どもの話をきいてあげる』ということが第一歩になります」
◆ポイントは「鼻呼吸」
それでは具体的に、「良い声」声をだすにはどんな事を意識すればよいのでしょうか。まず大切なのは「呼吸」です。
「『声』とは、吐く息に音が乗って出ているもの。『声を良くする』ということは、『呼吸をよくする』ことだとも言えます」
たとえば、話し方でよく言われる「噛む」という現象。これは、話している間に一瞬呼吸が止まることによって起こってしまうのだとか。また、緊張すると声が震える、早口になるといった問題も、呼吸が乱れることが原因で起こるといいます。
「緊張すると心拍数が上がり、呼吸が乱れやすくなります。その乱れた呼吸に声が乗ってしまうと早口になったり、声が上ずってしまうんです」
良い声を目指すためにはまず「呼吸」を見直してあげることからスタートしましょう。「鼻から息を吸って、まっすぐ一定に息を吐くこと」ができると、声はグンとよくなると言います。
「鼻呼吸、つまり鼻から息を吸うことによって、おなかまで深く空気が入っていきます。そしたら今度は息をスーッと一定に吐いていきましょう。こうして深く、安定した呼吸をすることによって、安定した声を出すことができるようになります。横隔膜をしっかり動かすと副交感神経が優位になり気持ちが安定し、心拍数も落ち着いて、リラックスして声を出すことができるようになります」
佐藤さんによると、知らず知らずのうちに口呼吸をしている人はとても多いのだそう。「口呼吸」になってしまうと、空気はおなかまで届かず、呼吸が浅く、ふわふわした薄い声しか出なくなってしまうといいます。また、口呼吸による弊害は声の出し方だけにとどまらず、かぜをひきやすい、集中力がなくなるなどさまざまな問題があります。
「お子さんの様子を観察して、口をポカンとあけていることが多いなあ、と感じたら『お口ポカンはやめようね』と声をかけてあげて、小さいころから鼻呼吸を意識づけるよう働きかけてあげてくださいね」
◆お口のストレッチで、ハキハキとしゃべることができるお口づくりを
鼻呼吸による深い呼吸の次に重要になってくるのが、声の出口になる「口」の形。「お口のなかの空間づくり」が大切だと佐藤さんは言います。
「せっかく鼻呼吸が上手にできても、お口をあまり開けないで口先だけで話してしまうと、小さい声、ボソボソとくぐもったような声になってしまいます。口のなかにしっかりと空間を作って、空気の通り道を作ってあげましょう」。
佐藤さんに、お口の空間づくりに役立つトレーニング法をいくつか教えていただきました。
●風船体操
風船のようにお口をプーっと膨らませてへこませる動きを何度か繰り返します。お口の内側の筋肉をストレッチによってやわらかく広げる体操です。
●飴玉体操
お口のなかで舌を左右に大きく動かします。左右の頬の内側に大きな飴玉があるのかな?と思われるぐらいに、頬の内側を交互に舌で強く押します。
●あいうえお体操
「あ・い・う・え・お・を」一文字ずつ、大きく顔全体を動かしながら発音します。たとえば「あ」なら、口に指が3本くらい縦に入るように大きく口をあけて発音します。「い」は、口を横に開き、「う」はしっかり口をすぼめます。顔全体を使うことで表情筋が鍛えられ、口先だけでは出せない、表情豊かな声が出せるようになります。
紹介した体操は、子どもだけでなく、親子でできるものばかり。どれかひとつでもよいので、親子で毎日数分だけでも遊び感覚で続けましょう。ちなみに、顔全体を大きく動かして顔や口の筋肉を鍛えることは、健康にも美容にもプラスに。リンパの流れもよくなって、むくみなどもスッキリ!
こうしたトレーニングは何歳から始めてもよく、大人になってから、中高年になってからでも遅くはないそう。でもせっかくなら、子ども時代から始めておけば「子どもたちにとって一生ものの大切なスキルになる」と佐藤さんは言います。
「はっきりと声が出せる流れを身体で覚えておけば、人前で話すことに抵抗感がなくなります。親子で遊び感覚で始めてみると、家庭内の会話もはずみ、話すことそのものがとても楽しくなりますよ!」
はっきりと滑舌のよい大きな声が出せると、相手とのコミュニケーションがとりやすくなって、おしゃべりが楽しくなり、自分にも自信が持てるようになります。また、たとえば、外などで危険が生じたときも、はっきりとした声を出せれば、大きな声で周囲に助けを求めるといったことも可能に。「声」を鍛える事にはさまざまなメリットがあります。
自分の話したいことや伝えたいことを「どのように伝えるか」を考えたとき、「話し方」はとても大事。親子で楽しみながら「声」を磨いてくださいね!
(プロフィール)
佐藤 恵さん
声・話し方コンプレクス解消ボイストレーナー。話し方改善スピーチコンサルタント。
秋田県出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。
一般社団法人日本声磨き普及協会 代表理事。株式会社ボイスクリエーションシュクル代表取締役。
東京都立王子総合高校講師(ボイス・スピーチトレーニング科目担当)。
夫の海外勤務に伴い、通算13年間海外で暮らすうちに、声や話し方によるコミュニケーションの大切さを痛感。帰国後、40歳でアナウンサースクール入学後、ラジオパーソナリティー&フリーアナウンサーに。2009年創業し、独自開発の声磨きメソッドにより、子どもの話し方・コミュニケーション教育をはじめ、幅広い年代に向けて、「声を起点」につながるコミュニケーションや自信、健康促進への支援を行っている。著書に『(CD付)たった15秒で好感度があがる声の磨き方・話し方』(中経出版)、 『ちゃんと話をきいてもらえる声を磨く!22のレッスン』(秀和システム)。



