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楽しく自由に!子どもと一緒に楽しむ「アート」な時間のススメ

公開日:2024/10/24
最終更新日:2024/10/24

創造力や表現力を高める上で、「アート」や「アート教育」に注目が集まりつつある昨今。子どもにアートに触れさせたい、アートを体験させたいと考える人も増えているといいます。
一方で、アートと聞くと「高尚なもの」や「難しいもの」と感じて、つい構えてしまったり、敬遠してしまう人もいるのでは?「アート」をもっと身近に、気軽に楽しむためにはどうすればよいのでしょうか。
そこで今回は、「アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室」代表の今泉真樹さんにアートとの関わり方について伺い、家庭でできる簡単なアート作品の作り方も教えていただきました。


「アート」に取り組むことで育まれる力とは?

近年、「非認知能力」という言葉はますます注目されており、これらの能力を高める「アート」の教育的効果に関心を持つ人も増えています。アート活動を通じて、子どもはどんな力を伸ばすことができると考えられるのでしょうか。今泉さんにお話を伺いました。

・ゼロからイチを生み出す力を鍛える
幼い頃から小さな失敗を積み重ねて、試行錯誤しながら作品作りをしていると、アイデアをスムーズに出せるようになります。

・自己肯定感を高める
人から言われたことをするのではなく、自分と対話するのがアート。自分の中でやりたい気持ちを追求し表現していくことで、ありのままの自分を受け入れられるように。何度も繰り返すうちに自信につながり、自己肯定感が高まります。

・創造力・想像力を育む
子どもの目に触れる所に、様々な素材を用意しておくと、好奇心がくすぐられて、クリエイティブな気持ちが芽生えます。遊びの一環として、アートの探求を繰り返していく中で、様々な発見をし、豊かな創造力や想像力が育まれていくのです。

・先を読む力がつく
何かを作るときには手順を考えます。何度か作っていくうちに段取りが考えられるようになり、効率よく進められるよう工夫するように。これは物事の先を読んで考える力に通じます。

この他にも、共同作業を通じてコミュニケーション力が高まったり、最後まで作品作りをすることによって「やり抜く力」を身につけたりすることもできるそうです。

このように、幅広い教育効果が期待できるアートですが、今泉さんはあくまで「アートを学んで何を得られるかというよりも、まずは楽しむということを大切にしてほしいんです」と力を込めます。

「確かに、アートに取り組むことで、さまざまな能力が身につく可能性はあります。しかしながら、必ずしもすべてが身につくわけではありませんし、すぐに結果が出るわけではありません。何かの力を得るためにアートに触れるのではなく、楽しみながらアートに取り組む時間を過ごした結果、何かしらの力が身につくのだと受け止めてほしいと思います」

◆アートは自由に楽しむもの!
図工は小学校3年生くらいまでは人気教科なのに、高学年になると嫌いになってしまう子も多いそうです。その原因のひとつは、年齢が上がるにつれ、評価や成績、優劣をつけられるようになること。せっかく創作を楽しんでいたのに、こうした経験がきっかけでアートと距離を置いてしまうのは残念ですよね。

では、子どもの「楽しい」を奪わないためにはどうしたらよいでしょうか?

実は「上手だね」といったほめ言葉が、アートから離れてしまう原因となる場合もあるのだとか。本来アートは「上手い、下手」という軸で評価をするべきではないのに、「写実的に描けること=上手い」と考えてしまう大人が多いのです。すると、「大人が思う『上手な絵』を描かなければならない」と子どもは無意識のうちにすりこまれ、でも「上手く描けない」と自信を失い、作品を創ることが楽しくなくなってしまう…という例は少なくないと言います。

「上手い、下手」という価値基準で判断するのではなく、「ステキな色合いだね!」と具体的な感想を伝えてあげたり、「最後まであきらめないで、よくがんばったね!」「ここを工夫したね!」と、試行錯誤して作ったプロセスを認めてあげるのがおすすめだと今泉さんは言います。

また、子どもの作品を見た時に、ついつい言語化させたくて、「これなぁに?」「どうしてこの色を使ったの?」なんて、「作品の解説」を求めてしまうこと、ありませんか?実はこのような問いかけが、子どもがアートを「難しい」「面倒」と感じる原因になってしまうことも。「作品について伝えたいことがあれば、子どもは自分から話してくれますよ」と今泉さん。作品をありのままに受け止め、子どもからの言葉を待ってあげることも大切なんですね。

子どもがアートを楽しめる工夫とは?
子どもがアートに楽しく取り組んでくれるようになるために、家庭でできることはあるのでしょうか。まずは、子どもがいつでも自由に制作に取り組める環境づくりから。

<「子どものアトリエ」を作ろう!>

・段ボールの机でもOK! 小さな空間を確保する
リビングの一角などほんの小さな場所で構わないので、子どもが自由に創作できる空間を作ります。廃材や色鉛筆、ペン、はさみなどをすぐに使える状態にしておき、気が向いた時に創作に取りかかれるようにしましょう。

・「おかたづけ」はしなくてもOK
「終わった後に片づけなければならない」と考えると、創作そのものが面倒になる子も。明日続きをやるかもしれないですし、パレットにはお気に入りの色が残っているかもしれません。「アトリエの中は自由な場所」と考え、多少散らかっていても、大目に見てあげてくださいね。

・見ただけで感情が揺さぶられる工夫を
色とりどりのペンやクレヨン・色鉛筆・絵具などが目の前にあれば、それだけでワクワクしてしまうもの。できるだけたくさんの色を用意してあげると効果的です。ポイントは、ケースなどにきれいに並べておくのではなく、トレイや箱などに出しておくこと。整理整頓されていると、かえって手を出しにくいことが多いので、雑然と置いて「何か作りたい!」という気持ちを刺激しましょう。

・無理強いしない、見張らない
やりたいときに気が済むまで、子どもの自由にやらせてあげるのが一番!昨日熱中していても、次の日には忘れていることもありますから、自発的にやりたくなるまで見守ります。また集中しているときには、そっとしておくことも大切です。作品は必ずしも「完成」させなくてもOK!その時々のやりたいこと、したい表現を尊重し、見守るようにしましょう。

おうちで簡単! 段ボールやトイレットペーパーの芯で作れる作品を紹介
続いてはアート制作の実践編。どこのおうちにもある材料を使って、簡単に作れるきれいでかわいい作品をご紹介。ハロウィンやクリスマスなど季節の飾りにもピッタリ!たくさんつくって、家をアートでいっぱいの空間にしてみましょう。

~段ボールとアルミホイルで作る、キラキラモビール~

<材料>
・段ボール、アルミホイル、糸(タコ糸より細め)、セロハンテープ、油性ペン

<作り方>
1) 段ボールを好きな形に切る
2) 外周に糸を挟めるように切り込みをいれていく
3) 裏になる面にセロハンテープで糸を止めてから、表になる面に模様が出るように、切り込みに糸をはさみながら巻く
4) 表面が平らになるようにアルミホイルで包む
5) 表面に糸の形が出るように、指で糸の部分を優しくこする。
6) 油性ペンで好きな色を塗る
7) いくつかを糸でつないで、モビールの完成!

~トイレットペーパーの芯で作るオーナメント~

<材料>
・トイレットペーパーの芯、色付け用のペンや飾り付け用のシールなど、ひも、のりなどの接着剤

<作り方>
1) トイレットペーパーの芯を好きな幅に切る
2) 色を塗る
3) 折ったり曲げたりしながらパーツを作り、それぞれをつなげて形を作っていく
4) ひもを付ければオーナメントのできあがり!

「観る」こともアートの楽しみ!
「美術館に行けば、見たことのない世界が開けます」と今泉さん。さまざまな「本物」の作品を見ると、こんな絵や技法があるんだ、こんな風に描いてみたい、など多くのことを知る機会になると言います。

「実は、子どもは大人が思っているほど『想像力豊か』ではないんですよ(笑)。見たことも聞いたこともないものは、描いたり表現することが難しいんです。だからこそ、いろいろな作品に触れ、さまざまな作風を見せてあげることで、子どもの世界を広げてあげてほしいと思います」

他の作品を見ることは、視野を広げ自分の中の引き出しを増やせる絶好のチャンスになります。「本物」が放つオーラのシャワーを浴びに、美術館や展覧会に足を運んでみましょう。

でも、「美術館や展覧会などで、子どもが騒いでしまわないか心配…」という方も多いかもしれません。そういった場合には、あらかじめ子どもにルールを説明し、騒いでしまったら一度外に出るなどの対応を考えておくと安心。「無理に全部観ようとしない」と考えることも大事です。子どもの作品展や子ども向けの展示、学生美術展などは、比較的子どもが足を運びやすく、親子で気兼ねなくアートを楽しむことができますよ。

「美術館や展覧会の楽しみ方としては、親子でお互い『好きな作品』を見つけて感想を伝え合ってみる、というのがおすすめです。好き嫌いなら難しいことを考えずに選べますし、心が動かされた何かを見つけられたら楽しいですよね」

美術館に行き慣れていない人もいるかもしれませんが、構えなくても大丈夫。「好きなものを見つけに行く」くらいの気楽な気持ちで、親子で楽しんでみてください。

アートは、自由で楽しいもの。正解も不正解もなく、自分の感じたことや思いを好きなように表現する…そんな喜びや楽しさにあふれた時間を過ごすことが、結果として子どもの成長につながっていくんですね。
親も「教育的な効果」にばかり目を向けていると、ついつい肩に力が入ってしまいがちです。しかし、「アートに向き合っている時間」を「自由に感じたり表現していい時間」と考えれば、アートがぐっと身近で楽しいものに感じられるのではないでしょうか。
真っ白な紙や色とりどりの絵の具を目の前にしたときの「ワクワク」は、大人も子どもも変わりません。芸術の秋、ぜひ親子で自由で楽しい「アートな時間」を過ごしてみてくださいね!

1歳から12歳までの学童型知育教室アデック

プロフィール
今泉真樹さん
アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室(http://www.piupiu.jp/child/)代表。東京都出身。桑沢デザイン研究所を卒業後、英国ローズ・ブルフォード大学を主席で卒業。大手ジュエリー会社にて、国内外の有名ブランドや宝塚歌劇団のジュエリーデザインなどを手がける。
のちに独立し、アトリエ・ピウを設立。オーダーメイドジュエリー、ジュエリー教室、ジュエリーデザインの制作、指導を行う。その後、知育こどもアート教室を立ち上げ、子どもの自由な発想力や思考力を育てることに焦点をあてた絵画・工作・野外アート活動の指導を行っている。