自然が子どもの先生!水辺をもっと楽しむネイチャーゲーム&アクティビティ
最終更新日:2024/08/16
夏真っ盛り!海や川、湖など、自然の水辺に遊びに行く計画を立てているファミリーも多いのではないでしょうか。水の中に入って遊ぶのはもちろん楽しいですが、自然の水辺に目を向けてみると、そこにはたくさんの発見や学びがあるんですよ。
そこで今回は「あおぞら自然共育舎」主宰であり、ネイチャーゲームインストラクターとして活躍する早川広美さんに、水から上がった後や水に入ることが苦手な子どもでも楽しめる、水辺でのさまざまな「遊び」について教えていただきました。
◆水辺の世界には発見がいっぱい!
海や川、湖沼など豊かな水に囲まれた日本。暑い夏にこうした「自然の水辺」にお出かけして、水の中に入って遊ぶのは、子ども達が大好きな遊びのひとつです。でも、せっかく自然の中にお出かけするのですから、自然のさまざまな表情に目を向け、感性を磨く機会にもしてほしいですよね。
「刻一刻と景色や様子が変わっていく、変化がある点は水辺ならではの面白さといえるかもしれません。また、水辺には水辺ならではの生態系があります。水の中に網を入れてみたり、水辺にある大きめの石をひっくり返してみると、町中にある公園や森などにはいない生き物の姿を見ることもできるんですよ」
早川さんによると、大人でも「川にこんなに生き物がいると思わなかった」という人も多くいるのだとか。普段街中で暮らしているときに目にするのとは違った景色や生き物と出会えるのも、水辺の醍醐味と言えそうです。そんな水辺の自然をもっと満喫できる「遊び」には、どんなものがあるのでしょうか?
◆「石」を使って遊んでみよう
「自然の水辺にあるもの」と言って真っ先に思い浮かぶのが、大小さまざな形の石や岩。川辺はもちろん、海岸や湖畔にもたくさんの石が転がっています。まずはそんな「石」を使った遊びの例をご紹介しましょう。
「石拾い」
シンプルに「石を集める」という遊び。宝探し感覚で「きれいな石を集める」というのはもちろん、「四角形のもの」「色が似ているもの」を探したり、「小さい石から少しずつ大きな石を拾ってくる」などのルールや「縛り」を設定して集めるのも楽しい!集めた石をよく観察してみると、ツルツルしていたりゴワゴワしていたり、細かい穴やくぼみ、模様があったりとさまざまな表情があることにも気がつくはず。シンプルでありつつも実は奥が深い遊びなんです。
「ストーンバランシング」
集めた石を重ねていく遊びです。高さを競うのはもちろんですが、石の色を限定してあつめたり、積み重ねた石のデザインを競うのも楽しいもの。どんな形や大きさの石を土台にすれば安定するか、知恵を絞りながら石のタワーを作ってみましょう。大人も夢中になって楽しめますよ!
◆水辺をさらに楽しむ「ネイチャーゲーム」
「ネイチャーゲーム」とは、「自然体験を通して自分を自然の一部ととらえ、自然から得た感動を共有することによって心豊かな生活を送る」という「シェアリングネイチャー」の考えに基づいた自然体験活動のこと。五感(見る・聞く・嗅ぐ・触る・味わう)を使って自然と仲良くなるアクティビティであり、花や木々などの知識がなくても、特別な道具を使わなくても、親子で楽しむことができます。
「夏、海や川にお出かけするファミリーも多いと思います。海や川といえば、マリンスポーツ系のレジャーや水遊びが思い浮かぶかもしれません。でも『ネイチャーゲーム』は、遊びを通じて自然とふれあうことが基本。泳げなくても、水に入らなくても楽しめるゲームがたくさんあるんですよ」
<ネイチャーゲームの遊び方はこちら!>
https://www.naturegame.or.jp/know/activity/
「音いくつ?」-水辺の音を数えよう!
まずは特別な道具や準備が必要なく、わずか1分あればできるアクティビティをご紹介。1分間目を閉じてどんな音が聞こえるか、耳を澄ませてみましょう。水の流れる音、波の音、風になびく木々の音、鳥の鳴き声など、自然のなかにはたくさんの「音」があることに気づきます。いくつ音を見つけられたでしょうか?どんな音が聞こえたか、みんなで発表しあえば新しい発見があるかも!
「雲見」-空の変化を観察しよう
こちらも道具や準備が必要ない手軽なアクティビティ。特に、視界をさえぎるものがなく、空がとても高く見える海辺がおすすめ。視界が広がる空間で、空を見上げて、何が見えたかを目に焼き付けておきます。そのまま頭を動かさずに目を閉じて20秒ほど心の中で数えた後にそっと眼を開け同じ空を見上げてみると、さっきはあった雲が違う場所にあったり、形を変えていたりと、わずか20秒でも自然の変化を実感することができます。大きな入道雲など夏の雲は見ごたえいっぱいです!静かに見える空の上だけれど、実はダイナミックなことが起きているんだなぁーと、なんとも大きな気持ちにもさせてくれます。時間があればゆっくり夕暮れを観察するのもおすすめだそうです。
「ミクロハイク」-「小さな生き物」になったつもりで探検!
虫眼鏡を使って、砂浜や川辺を、そこに住む小さな生き物になったつもりで探検します。一本の糸を小さな生き物の「通り道」に見立て、その道のりを虫眼鏡をでたどりながらずんずん進んでいきましょう。すると、砂浜がゴツゴツした岩場に見えたり、小さな石が巨大な岩に見えたり、時には生き物と出くわすことも。小さな生き物の視点で砂浜を観察すると、砂粒にもさまざまな色や形があったり、貝殻の破片やマイクロプラスチックが混じっている、なんて発見があるかも。打ち上げられた海藻を探検してみるのも楽しいかもしれませんね。普段あまり意識しない足下に広がっている、発見と冒険に満ちた世界に出発しましょう!
「ジグソーストーン」-自然のパズルを楽しもう
いろいろな形の型紙に合わせて、ジグゾーパズルのように石を置いてみましょう。用意するのは、三角・丸・四角・星形などに切った型紙。段ボールなどであらかじめ作ったものを持参するといいですね。
水辺の石を拾い、段ボールの型紙に石を埋めていきます。たとえば角に合わせるには、どこかがとがった石を、辺に合わせるならまっすぐな長い辺がある石を。石=パズルのピースととらえて、埋めたい場所に合う石を見つけていきます。そうそう、石と石の隙間に入れる小さな石も必要ですね!みんなで石を集めながら型紙を埋めていくことで、水辺の石にもいろいろな形や大きさがあることに気づきますし、ピッタリ合うものを見つけることもゲーム感覚で楽しめます。
「森の色合わせ」-水辺にある「色」を見つけよう!
川辺には石だけではなく、葉っぱなども落ちています。100円ショップでも販売している色折紙や、クレヨンで色を塗って切り抜いた紙を持参し、それらと似た色の石や葉っぱを集めてみましょう。石=灰色というイメージがあるかもしれませんが、よく探してみると赤や白、緑色っぽい石もありますし、水で濡れている石と乾いた石でも色に違いがあります。川底で陽の光を受けてキラキラと光っている石は宝石のようです。
「自然の紋」-お気に入りの生きものや植物などを1つの“紋”に
水辺でたくさん遊び、見つけた生き物、植物などを観察したあとは、好きな形、印象に残った形で、自分だけの「紋」を作ってみましょう。丸のなかに好きな自然の特徴を捉えて描いてみれば、オリジナルの紋ができあがり!写真は川の波、陽の光、その中に暮らす川の虫をかたどった自然の紋。絵のうまい下手は関係ありません。子どもの観察力と感性から、ステキな紋が誕生します。
お出かけ先で印象に残ったことや楽しい思い出をじっくりと思い返しながら「形」や「デザイン」に落とし込んでいくことで、子どもの表現力と創造力が高まります。
◆安全面にも配慮して楽しく遊ぼう!
今回は、水に入らなくても楽しめる水辺のネイチャーゲームをご紹介しましたが、水辺には危険も伴います。たとえば川は、流れが穏やかで天候がよくても上流で雨が降ると急に水かさや水流が増してしまいます。自然のなかでは常に天気や状況の変化をチェックすることが大事です。
そして何より大切なのは、ぜったいに子どもから目を離さないこと。子どもを遊ばせておくのではなく、おとなも自分の感性で一緒に楽しめるのがネイチャーゲームの良い所です。石や葉っぱを拾いにいくときや水に入る時も、一緒に行動しながら危険なことがないか確認しましょう。また、水辺ではマリンシューズを履いたり、少しでも水に入る場合はライフジャケットを身につけておくなどの対応も必要です。
ネイチャーゲームは五感を使って楽しむものなので、素手で石や葉っぱを触って手触りや感触を体感することも大切です。けれども残念なことに、水辺には思わぬ危険なゴミ(薬品や先がとがったもの、割れたビン、中身が入ったまま放置されたものなど)もまぎれていることがあります。何かを拾ってゲームを楽しむ場合は、「ゴミはぜったいに拾わないこと」も事前に約束しておきましょう。
海や川などに遊びに行くと、ついつい「あれも、これも」と予定を詰め込んでしまいがち。でも視点を少し変えれば、特別な道具や知識がなくても、自然をベースにさまざまな遊びが生まれます。
自然の中での遊びは子どもの五感を磨くチャンス。水や石、葉っぱ、生き物、空や雲。さまざまな自然に触れ、目を向け、耳を澄まして、全身で自然を楽しみましょう!「遊び方」「楽しみ方」さえわかれば、あとは自然が子どもたちに色々なことを教える「先生」になってくれます。そして、一緒にいる大人も同じように楽しめば、自然を通して子どもと向き合うひとときにもなることでしょう。
プロフィール
早川 広美さん
大学卒業後、人材育成の会社で野外行動学習のインストラクターに就いたことがきっかけで、「自然と人を結ぶ仕事をしたい」と考えるようになる。その頃、地元の本屋でネイチャーゲームの本を見つけたのが運命的な出会いとなり、ネイチャーゲーム(シェアリングネイチャー)が生涯の友となる。会社退職後、フリーランスとして活動を開始。あおぞら自然共育舎主宰。
自然体験から1人1人が気づくこと、感じることを大切にし、自然も人も1つとして同じもの・ことがない、その魅力を感じる日々は何年経っても変わらない。ネイチャーゲームインストラクターとしてはもちろん、ビオトープ管理士、ハーバルセラピストとしても活動中。プライベートではベランダ菜園にはまっていて、目下の願いは「地面が欲しい!」
制作協力
公益社団法人 日本シェアリングネイチャー協会
日本にネイチャーゲームが初めて紹介された1986年に設立された「ネイチャーゲーム研究所」から、ネイチャーゲームの普及及び指導者養成など公益的事業を引き継ぎ、 1993年に新たに結成され現在に至る。講師の派遣・紹介、大会および講習会・研修会の開催、教材・教具の開発、出版物の刊行や、国際交流活動など、さまざまな事業を通じてネイチャーゲームの普及と振興を行う。また、国内各地域に指導者が中心となった会を組織し、ネイチャーゲームを通して、市民とともに、身近な公園で自然とふれあう活動を展開している。