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うちの子の歯並び、大丈夫?幼児期からできる歯並び対策!

公開日:2024/06/08
最終更新日:2024/06/07

乳歯が生えそろってくると気になるのが「歯並び」。いずれ永久歯に生え変わりますが、このままでいいの?矯正をしたほうがいいのかな?と悩んでしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、子どもの歯並びと、健康でいい歯並びのためにできることや心構え、小児矯正の必要性などについて、歯科衛生士の久保早和子さんにお話しを伺いました。


◆「歯並びが悪い」とはどんな状態?

一般的に「歯並びが悪い」と言われるのは、歯の見た目や噛み合わせがよくない状態のこと。上の歯が大きく前に突き出している「上顎前突(いわゆる『出っ歯』)」や下の前歯が上の前歯より前に出てしまう「反対咬合(いわゆる『受け口』)」、歯が重なり合って生えてしまう『叢生(『八重歯』『乱ぐい歯』など)』など、さまざまなタイプがあります。
その原因は遺伝や生活習慣によるものなどさまざまですが、あごの大きさと歯の大きさが合わないことで、永久歯がきれいに生えそろわず歯列が乱れてしまい「歯並び」が悪くなってしまうことも多いと言います。
小さな子どもの場合、歯は小さな乳歯ですし、あごも発達の途中です。ですから、幼少期に歯列がきれいでなくても、将来、必ずしも歯並びが悪くなるというわけではないそう。たとえば、乳歯の段階では歯と歯のあいだに隙間がある、いわゆる『すきっ歯』の子が多くいます。
「でもそれは、将来的に永久歯に生え変わってきた時に、歯がきれいに並ぶためのスペースがあるとも言えるんです。むしろ、乳歯の状態で歯がきれいに並んでいる子のほうが、気をつけて経過を診ていくべきかもしれませんね」
乳歯しか生えていない時期に、永久歯に生え変わってからの歯並びの良し悪しを測るのは至難の業。歯並びに関しては、歯科医師や歯科衛生士といった、「歯のプロ」に診てもらわないとわからないことが多いのです。そのチェックのための大切な機会が、各自治体で行われている歯科健診。幼児期の歯科健診は、1歳6カ月と3歳の時期に義務付けられています。

「いずれも歯の生え方やお口の中の状態、虫歯の有無をチェックしますが、とくに3歳児の歯科健診は、ちょうど乳歯が生えそろった時期に行われるので、歯並びの様子がよくわかります」
こうした幼児期の検診などで、特に気になる「悪い歯並び」の例として久保先生が挙げるのが「開口」と呼ばれる状態です。
「奥歯を噛んだ際に、上下の前歯が合わさらずに、前歯の間から舌が見えるようになっていることを開口と言います」
開口にはいったいどんなリスクがあるのでしょうか。
「まず、前歯が合わさらない状態ですと、嚙み切る場所がなく、奥歯に負担がかかりやすくなります。また、歯がかみ合わずに空いているということは、唇が閉じにくくなるということにも繋がります。すると口の中が渇きやすく、虫歯や歯肉炎のリスクも高まってしまうんです」
このほかにも音を作り出す「構音」が難しく、「さしすせそ」「ぱぴぷぺぽ」といった発音が苦手になってしまったり、見た目の印象などのさまざまな面で影響が考えられるといいます。

◆「開口」になってしまう原因とは

開口の状態になる原因はいくつか挙げることができます。一つ目は「指しゃぶり」。指をしゃぶるとき、指で歯を押し続けることによって、上下の前歯の間に隙間が生まれてしまうのだといいます。
「指しゃぶり」が原因のひとつと聞くと、「早くやめさせなければ」と思ってしまうかもしれません。でも、必ずしも「今すぐにやめさせなければならない」わけではないと久保さんは言います。
「3歳ごろの指しゃぶりは、まだまだ子どもにとっては自分を安心させる行為でもあります。『指しゃぶり=悪』ではありません。無理してやめさせるとかえってストレスになってしまいますから、4~5歳くらいまでは様子を見てあげましょう。やめさせようと無理強いはしないでくださいね」
他に原因として考えられるのは「舌」の働き。たとえば、生え変わりの時期などに生え変わってきた歯が気になって、舌で押しだすようにする習慣がついてしまう子は多く、このような「舌癖」が開口の原因になることもあるのだとか。

また離乳後に哺乳瓶を使い続けることも原因のひとつと久保先生は言います。
「哺乳瓶を長時間くわえたままでいることも、開口の原因になり得ます。哺乳瓶う蝕(ほにゅうびんうしょく:哺乳瓶でジュースや粉ミルクなどを飲ませることによって前歯がむし歯になってしまうこと)の恐れもありますので、離乳が完了したら哺乳瓶は早めに卒業したほうがよいかと思います」


◆歯の健康のために、注意したい「お口ポカン」

コロナ禍におけるマスク生活により一気に増加したとされ、近年耳にする機会が多い「お口ポカン」。実はこの「お口ポカン」も、歯の開口の原因のひとつと考えられています。
「お口が空いた状態になってしまっていると、唇によって歯を前から抑える力が加わらなくなります。そのため、外側に歯が押し出されやすくなり、その結果上下の前歯の空間が広がってしまうことにつながります」

「お口ポカン」は、開口にかぎらず将来の歯並びや発声などに悪影響を及ぼす可能性があるのだそう。
「口が半開きの状態になると舌は下向きになります。舌は筋肉でできているので、口を半開きにして、舌がずっと下にある状態が続くと、筋力が弱って上に持ち上がらなくなってしまうこともあるんです。子どものあごは発達状態にありますが、ここで舌の筋力が弱ってしまうと、あごの健やかな成長にも悪影響を及ぼしますし、あごがきちんと成長しないことは歯並びの悪さの原因や、言葉の発音の悪さにもつながってしまうんです」

「お口ポカン」のリスクは他にもあります。たとえば、口呼吸になりやすいこともリスクひとつです。
「口を閉じて鼻呼吸をしていれば、鼻の中が、ろ過装置のような役目をしてくれて、悪いものの侵入をある程度防いでくれます。しかし、『お口ポカン』の状態は口呼吸になりやすく、口から冷たい空気が入って風邪をひきやすくなるといったこともあります」
また、口呼吸をしていると、口の中を保護する唾液が乾燥してしまい虫歯になりやすくなるリスクもあると久保先生は言います。


◆「きれいな歯並び」のために幼児期からできること

幼児期の気になる歯並びである「開口」。開口にならないようにするために、あるいはなってしまった場合に、どのような対策が考えられるでしょうか。久保先生によると幼児期には「口腔筋機能療法(MFT)」が有効な方法のひとつなのだそう。
「と言っても決して難しいものではありません。簡単に言えば『しっかり口を閉じる』ということだけでも、開口を矯正していくことは可能なんです」

先に書いた通り、唇の力が前歯に対して前からしっかりかかることは、きれいな歯並びを保つためには大切。だからこそ、しっかりと口の周りの筋肉(口輪筋)を使い、意識して口を閉じることが、開口を防ぐ・矯正することに繋がるのだそう。
また口を閉じることとあわせて、その際の「舌の位置」にも注意が必要と久保先生は言います。
「口を閉じた状態では通常、舌は上あごについて、少し前歯に触れる位置にあります。お口を閉じるとともに、舌を正しい位置に置くことも大切です」

乳歯の時は、大人がやるような装置を入れての歯列矯正はできません。まずはしっかり口を閉じ、口の周りの筋肉を利用して歯の位置を整えましょう。「お口ポカンしているよ」「お口を閉じようね」と働きかけていくと、子ども達も「お口ポカンって悪いことなんだ」と意識するようになりますし、しだいに口を閉じるようになってきます。
「口を閉じる時間が長いほど、歯が正しい位置に戻ってきますので、乳歯の頃、幼児の段階では『しっかり口を閉じる』ということにまずは取り組んでほしいですね」

もうひとつのおすすめは「あいうべ体操」。やり方は簡単で、4秒ほどかけてゆっくり「あ・い・う・べ」と発音するだけ。これを1日に10回×3セットやると、口輪筋や下の筋肉など口の周りの筋肉を鍛えるとともに、口呼吸を鼻呼吸に変える効果があるそうです。

歯並びが心配・・・となると、歯科矯正を思い浮かべる方も多いと思いますが、実は、私たちがイメージする器具を用いた一般的な歯科矯正は、永久歯が生えそろった中高生以降にしかできません。
「乳歯が永久歯に生えかわる時期に行う小児歯科矯正もありますが、これは子どもにとっても負担が大きいもの。『歯並びが悪ければ矯正を』と考えるのではなく、まずはお口ポカンをやめたり、『あいうべ体操』から始めてみると良いと思います」

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◆楽しく定期的に歯医者さんに通う習慣を!

そしてもうひとつ意識しておきたいのは、「小さいうちから定期的に歯医者さんに通うこと」だと久保先生は言います。
「歯医者さんというと、かつては歯が痛くなってから行くところ、というイメージだったと思いますが、今はどの歯医者さんも予防歯科に力を入れています。子どもも、1歳6カ月や3歳児の健診だけでなく、歯が生えたら定期的に親子で歯医者さんに通うことをおすすめします」
治療ではないから痛くないし、何かあってもプロから適切なアドバイスをいただくことができるので安心ですよね。子どもも小さいうちから歯科医院に通っていれば「歯医者さんに行くって気持ちがいい!」というプラスの習慣も身につきそうです。
「自分の子どものあごが小さいかどうか、普通に生活している範囲ではわかりにくいですよね。でも、メンテナンスのために歯科に通っていると、『顎が小さいかもしれない』ということもわかってきます。そうするとあごの形を整えていくための器具を使った矯正などが必要になった場合も、早期から取り組むことが可能になります」

将来的に歯並びに悩まないための早めの準備、そして虫歯予防など総合的な観点からも、「小さなころから歯科と離れずにいることが大事です」と久保先生は力を込めます。
永久歯に生え変わった後から歯列矯正をスタートすると、矯正が完了するまでに長い期間がかかったり、治療に痛みが伴ったり、抜歯が必要になる場合もあるのだとか。「お口の健康を意識した生活を送っていれば、たとえ将来、歯科矯正が必要になっても最小限の矯正ですむことも多いのです」と久保先生は言います。

お口ポカンをやめる、口呼吸をしない、あいうべ体操をするなど、遊び感覚でできる歯並び対策、ぜひ今日から親子で始めてみましょう!


(プロフィール)
プロフィール
久保早和子先生
新東京歯科衛生士学校専任教員。豊富な現場経験をもとに現在は歯科衛生士の育成を行っている。