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正しい姿勢で座れてる?子どもの心身の健康に関わる「座り方」の話

公開日:2024/06/22
最終更新日:2024/06/21

1日の中で座っている時間は意外と長いもの。小学生ともなると1日中授業を受けていますから、起きている時間の大部分は座って過ごしていると言っても過言ではありません。それだけに、子どもの「座り姿勢」が気になる人も、きっと多いのではないでしょうか。
そこで今回着目したのは「座り方」について。良い座り姿勢とはどのようなものなのか、姿勢の良し悪しは子どもにどのような影響を与えるのかなどについて、一般社団法人日本姿勢教育協会 会長の清水哲也さんに伺いました。背骨を動かす簡単ストレッチもご紹介します!


姿勢が悪いとどんなリスクがあるの?
「悪い座り姿勢」というと猫背や背もたれに寄りかかった座り方、頬杖などの姿勢が思い浮かびますよね。大人も子どもも、「姿勢を良くしてください」なんて言われた経験はきっとあるはず。では、そもそも姿勢が「良い」「悪い」とはどのような状態のことを言うのでしょうか。

「たとえば、椅子に座って思いきり猫背になってバンザイをしてみてください。きっとうまく両手が挙がらないのではないでしょうか。同じく、猫背の状態では足を挙げたり、呼吸をすることも難しいと思います。しかし、背中を伸ばした姿勢をとると、これらの動作がスムーズに行えると思います。日本姿勢教育協会としては、『良い姿勢』とはこのように『体を楽に動かせる姿勢』だということをお話しています」

「構造と機能はリンクするんです」と話す清水さん。それでは良い姿勢が取れない・崩れやすいと、子どもにはどのような影響があるのでしょう?具体的には以下のような影響が考えられるといいます。

<肉体>
・あごが正しい位置になく、口がぽかんと空いてしまう
・肩こりや関節、内臓への負担がかかる

<精神>
・やる気が出ない
・神経の伝達が悪い
・ストレスホルモンの分泌が増える

<印象>
・声が出にくく、ぼそぼそとした話し方になりやすく、暗い感じを与える

<集中>
・酸素を十分に取り込めなくなり、集中力がダウンする

上に挙げたのはほんの一例ですが、姿勢が悪いと心身ともにあらゆる面で影響があることが分かります。一方、良い姿勢をとって勉強に取り組むと成績が上がるというエビデンスもあるのだとか。良い姿勢でいることは能力をより発揮できることにもつながると言えます。


姿勢をとるために意識するべきこととは?
姿勢が子どもの発育にさまざまな影響良い座りを及ぼすことは分かりました。それでは実際、身体を動かしやすい「良い座り姿勢」をとるためにはどうしたらよいのでしょうか。清水さんによると、座るときにまず大事なのは「坐骨で座る事」なのだそう。

「まず椅子に座って、手をお尻の下に入れてみてください。この時両手にあたっている堅い骨が坐骨です。この状態で腰から背中を丸めていって少しずつ猫背になってみましょう。すると、坐骨が前にずれていく感覚が手に伝わると思います(②)。逆に腰から背中を反らせた『反り腰』の姿勢をとっていくと、後ろ側に坐骨がずれていきます。このように前後に動かしてみて、手に一番圧力がかかって痛いところで手を引き抜くと、坐骨で座れている状態(①)になります」

きちんと坐骨で座ることができると骨盤が立ち、背骨がきれいなS字カーブになり、体を動かしやすい姿勢に。軸が通って呼吸も楽になり、脳が活性化し、神経の働きもよくなり、筋肉も柔らかくなるといいます。

一方、坐骨が前後にずれた状態になると、猫背や反り腰といった腰や背中に負担のかかる姿勢になってしまいます。特に、小さい子どもは体が柔らかく、「良い姿勢」をしようとすると腰を反り過ぎてしまうことも多いのだとか。

「良い姿勢」と聞くとついつい「背中を伸ばして座る事」と思いがちですが、まず大事なのはその背骨の土台となる「坐骨」を正しい位置に置き、安定させることなんですね。

「そのうえで、『背中』を意識する事ももちろん大切です。姿勢が大切な理由は、一言で言うと『背骨が大事だから』。背骨には太さ1㎝ほどの神経の束が通っています。運動神経、感覚神経、自律神経などが脳につながっていて、いわば第二の脳と言ってもいいでしょう。しっかりと坐骨で座ることと併せて、背骨の柔軟性を保つことも大事です」


 

最初が肝心! 良い姿勢でやる気のスイッチをONにしよう
しかしその一方、「常に良い姿勢で座ることはとても難しいことなんですよ」と清水さんは言います。人間の体は立ったり動いたりするようにできているため、そもそも座る姿勢は崩れやすいものなのだとか。

「ですから、『良い姿勢を取り続ける』ということではなく、自分の姿勢が崩れていると気づくこと、そして気づいたら正しい位置に戻せることが、良い姿勢で長く座るためには大事なんです」

では、学校などでできるだけ良い姿勢を取ってもらうために、子どもにはどのような働きかけをしたらよいのでしょう。そこで清水さんがおすすめする取り組みが、「最初の2分間だけでも良い姿勢を作る」ということ。

「例えば授業のはじめなど、何かをスタートするときに、まず2分間だけでもよいので、良い姿勢を作ってみましょう。それだけで、やる気のスイッチがONになるんですよ」

2010年に行われた、コロンビア大学とハーバード大学の姿勢によるストレスホルモンの変化に関する共同研究によると、2分間良い姿勢(胸を張る姿勢)をとるだけで、テストステロンが上昇し、気力などの精神面に良い影響を及ぼす一方、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールは減少するという実験結果があるのだとか。つまり、姿勢を整えるだけで心の準備ができるというわけです。

「子どもたちには保育園や幼稚園、学校などで、何かを始める前には良い姿勢でスタートしようね、と伝えておくとよいでしょう。また自宅でも、食事や勉強、タブレットをさわる前などに、まず良い姿勢から始めるということを促してみると良いと思います」

まずは2分間だけ良い姿勢をとることができれば、ホルモンの作用によってその姿勢を「気持ち良い」と感じられるようになりますし、姿勢が崩れた際に自然とその「心地よい姿勢=良い姿勢」を取れるようになっていきます。

「いつも『姿勢を良くしなさい』と指摘していると、子どもにとって『姿勢』という言葉自体に嫌なイメージがついてしまいます。また良い姿勢をとろうと気にしすぎると、緊張して体が硬くなってしまうものです。まずは2分間だけ良い姿勢をとって、『良い姿勢』は『気持ち良い姿勢』なのだということを、ぜひ子どもたちに体感してほしいです。と同時に、『姿勢が崩れてもいいんだよ。いい姿勢に戻していこうね』と声をかけてあげてほしいですね」


おすすめ! 親子で取り組む背骨のストレッチ「せぼねっち」を紹介
できるだけ長い時間良い姿勢をとるために、まず意識づけが大事ということはわかりました。その他に、良い姿勢を維持するためにできることは何かあるのでしょうか?

「昔の人は何をするにも体を動かす必要があったため、特に気にしなくても日常生活で背骨も動いていました。さまざまなものが便利になった現代では、昔よりも体を動かす機会が減ったことに加え、座っている時間が増えていますから、意識的に背骨を動かす必要があります」

良い姿勢のためには、背骨を動かしてその柔軟性を高めることが大切なのだとか。そのために家庭できる背骨のストレッチ、「せぼねっち」をご紹介いただきました。このストレッチを行ってから正しい姿勢を取るとより効果的なのだそう。座りながら簡単にできますので、ぜひ親子でチャレンジしてみてくださいね。

●せぼねっち:背中から腰を丸める、反らす、をゆっくりと3回繰り返します。

①息を吐きながら背中を丸め、手の甲を合わせるように手を前に出します。この時に背中をしっかりと丸めるとより効果的です。

②次に手のひらを上に向け、息を吸いながらひじをしっかりと後ろに引き、体を軽くそらせます。この時に胸を開くようにすると効果的になります。

歯磨きと同じように「せぼねっち」を習慣化して「背骨みがき」をしてほしいと清水さん。朝起きた時にやれば気持ちよく1日のスタートが切れそうですね。また、勉強の前なら集中力アップ、運動の前ならパフォーマンスが上がり、寝る前なら胸郭に柔軟性がつくことで睡眠の質の向上にもなるとのことです。

それぞれの家庭でやりやすい時間帯を見つけて、親子そろって「背骨みがき習慣」に一緒に取り組んでみましょう!


「あぐら」やソファなどでの座り方も注意!
自宅で過ごす際には、床であぐらをかいたり、ソファに深く沈み込んで過ごすといった時間も多いのでは?このような姿勢で過ごす場合、注意点はあるのでしょうか。

「『あぐら』は骨盤が後ろに倒れやすく、坐骨がずれてしまうために姿勢を保つのが難しいんです。正座も膝に負担がかかりますので、床に直接座るという事自体、実はあまり望ましくありません。また、ソファも沈み込みすぎるために腰に負担がかかってしまう場合があるんですよ」

清水さんによると、できれば床よりも椅子に座る方が、良い姿勢は保ちやすいのだとか。もし床にあぐらをかくのであれば、お尻のところに折りたたんだタオルやクッションなどの、少し硬めで高さのあるものを入れ、骨盤が後ろに傾かないようにしてあげましょう。ソファに座る際にも腰にクッションを入れるなど、坐骨で座り、骨盤を立たせることを意識すると腰の負担を軽減することができるそうです。

座り方について様々なお話を専門家に伺いましたが、いかがでしたか。体が動かしやすい、心地いい位置が良い姿勢とのことですので、親子で座りやすい姿勢を探してみてくださいね。ポイントは、親子で一緒に、楽しく!まずは「せぼねっち」で背骨を動かして、2分間だけでも良い姿勢を作るところから始めてみましょう。

正しい姿勢で座れてる?子どもの心身の健康に関わる「座り方」の話1歳から12歳までの学童型知育教室アデック

プロフィール
清水 哲也さん
1980年神奈川県生まれ。放送大学「姿勢と健康」「姿勢と栄養から考える健康学」講師。2012年に鷺沼カイロプラクティック鍼灸整体院開院。同時に姿勢教育協会の講師として活動を行う。2018年に鍼灸整体院meguruを開院。現在は院での施術の他に、企業や学校関係、歯科医院や寺、神社など多くの場所での講師活動や、テレビやラジオ、雑誌などに姿勢の専門家として出演している。